災害時のペット避難を巡る問題は、年々注目されています。「ペットも家族」という声が強まる一方で、避難所では苦情や対立が起きやすいのも現実です。その背景にあるのは、善悪ではなく“共存の難しさ”です。防災士として被災地や避難所を見てきた立場から、ペット避難における共存の本質を整理します。
■① ペット避難問題の本質は対立ではない
ペット避難の問題は「飼い主 vs 飼っていない人」の対立構造で語られがちです。しかし本質はそこではありません。避難所という極限環境で、異なる価値観を持つ人同士がどう折り合いをつけるかという、共存の問題です。
■② 避難所は“誰かの家”ではない
避難所は飼い主の家でも、行政の施設でもなく、被災者全員の生活空間です。そこでは「自分が正しい」ではなく、「どうすれば皆が耐えられるか」という視点が不可欠になります。この認識が欠けると、必ず摩擦が生じます。
■③ なぜペットはトラブルになりやすいのか
ペットは音・におい・アレルギー・恐怖心など、五感に直接影響します。しかも災害時は心身ともに余裕がなく、普段なら我慢できることも受け入れられません。トラブルが起きるのは自然な流れでもあります。
■④ 共存の前提は「配慮の非対称性」
共存において重要なのは、配慮の量が同じである必要はないということです。現実的には、ペットを連れている側に、より多くの配慮が求められます。これは差別ではなく、影響範囲の違いによるものです。
■⑤ 飼い主に求められる共存力
共存を成立させるために、飼い主側には次の姿勢が求められます。
鳴き声対策、ケージ管理、清掃、周囲への声かけ、ルール遵守。これらは「遠慮」ではなく、共存のための最低条件です。準備不足は、結果的に自分とペットを苦しめます。
■⑥ 在宅避難は共存を守る強力な選択肢
自宅が安全な場合、在宅避難はペットと人の共存を守る有効な手段です。避難所に行かない選択は、わがままではありません。周囲への配慮でもあり、行政も推奨している現実的な行動です。
■⑦ 行政が抱える「共存」の限界
自治体はペット同行避難を掲げていますが、すべての避難所で完全な共存環境を整えるのは不可能です。人員・スペース・資機材には限界があります。行政だけに理想を求めると、現場は崩壊します。
■⑧ 平時から共存を考えることの重要性
共存は災害時に突然始めるものではありません。地域の防災訓練、自治会、防災講座などでペット避難の話題を共有し、顔の見える関係を作ることが、いざという時の衝突を減らします。
■まとめ|ペット避難のゴールは「一緒に生き延びる」こと
ペット避難における共存とは、全員が快適に過ごすことではありません。誰もが「耐えられる状態」を作ることです。
結論:
ペット避難の共存は、権利の主張ではなく、配慮と準備の積み重ねで成立します。
防災士として被災地を見てきて強く感じるのは、共存できた避難所ほど混乱が少なかったという事実です。共存は理想論ではなく、命を守るための現実的な防災行動です。

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