災害時、「あるもので何とかする力」は命をつなぎます。
その象徴とも言えるのが、ダンボールの再利用です。
避難所の簡易ベッド、間仕切り、床材、収納箱――。
ダンボールは軽く、加工しやすく、全国どこでも手に入るため、防災現場で大きな役割を果たしてきました。
一方で近年、リサイクルや再利用の裏に潜む“見えないリスク”にも目を向ける必要があります。
■① 防災におけるリサイクルの価値
災害時は物資が不足します。
新品・専用品にこだわらず、再利用できる資材を活かすことは重要です。
特にダンボールは、
・断熱性がある
・床からの冷えを防ぐ
・衛生状態を保ちやすい
といった利点があり、災害関連死の要因となる「低体温」「長時間の床生活」を減らす効果があります。
実際、熊本地震や能登半島地震でも、ダンボールベッドの有効性が広く確認されました。
■② 再利用に潜む“見えない危険”
しかし、リサイクル=安全とは限りません。
ダンボールや資材は、
・どこで使われていたのか
・何が付着していたのか
が分からないケースも多くあります。
特に注意すべきなのが、
放射性物質・化学物質・血液や体液などの汚染リスクです。
■③ 放射線・放射性物質と再利用の問題
東日本大震災以降、放射線と資材再利用の関係は大きな課題となりました。
除染地域では、
・土壌
・建材
・廃棄物
に放射性物質が付着している可能性があり、用途や移動が厳しく制限されています。
災害時であっても、
「善意の再利用」が二次被ばくにつながることは許されません。
防災においても、
放射線・放射性物質が関係する資材は、必ず行政管理下で扱う
という原則は変わりません。
■④ 除染と防災は切り離せない
除染は「片付け」ではなく「安全確保」です。
・何を使っていいのか
・何を再利用してはいけないのか
この線引きが曖昧になると、
健康被害や長期的なリスクを残します。
防災現場では、
スピードより安全性が優先されるべき場面が確実に存在します。
■⑤ 犯罪捜査・戦争犯罪と“再利用できない物”
もう一つ見落とされがちなのが、
犯罪捜査や戦争犯罪に関わる資材です。
災害現場では、
・事件性が否定できない死亡
・破壊された建物
・血痕や遺留物
が存在することがあります。
これらは、
防災資材として再利用する以前に、
証拠保全の対象となります。
不用意な再利用は、
真相解明や責任追及を妨げる結果になりかねません。
■⑥ 防災リサイクルに必要な視点
防災におけるリサイクルで大切なのは、
「使えるか」ではなく
「使ってよいか」です。
判断基準として、
・出所が明確か
・健康被害の可能性はないか
・法的・倫理的な問題はないか
を考える必要があります。
■⑦ “何でも再利用”が正解ではない
防災は工夫の世界ですが、
同時に線引きの世界でもあります。
再利用が命を守ることもあれば、
再利用が新たな被害を生むこともある。
だからこそ、
防災リーダーや行政、防災士の役割が重要になります。
■まとめ|防災×リサイクルの本質
防災におけるリサイクルは、
「もったいない精神」だけでは成り立ちません。
・安全性
・科学的根拠
・社会的責任
これらを踏まえた上で初めて、
人を守る再利用になります。
防災とは、
限られた資源をどう使うかであり、
同時に、使わない勇気を持つ判断力でもあるのです。

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