【防災士が解説】救急業務の歴史── 日本の救急はどう発展してきたのか?

119番をすれば、救急車が駆けつけてくれる。
これは当たり前のように感じますが、日本の救急体制は
“市民の努力・消防の進化・法律整備”によって築かれてきたものです。

ここでは、防災士の視点で
日本の救急業務がどのように発展してきたのかをわかりやすく解説します。


■ ① 明治〜戦前:救急車の原点は“消防”にあった

日本で最初に救急搬送が行われたのは 明治時代

● 大火傷や事故患者を消防組が荷車で搬送
● 警察や民間団体が負傷者を対応する地域もあった
● 現代のような“救急専用制度”は存在しない

当時は医療体制も整っておらず、
救急は「誰かがやらなければならない仕事」として消防が担いました。


■ ② 戦後〜1950年代:専用救急車の誕生

戦後、交通事故が急増し、救急車の必要性が高まります。

● 昭和20〜30年代:消防が救急車の保有を開始
● 救急車は“患者を運ぶだけ”の役割
● 応急処置はほとんどできない時代

まだ「救急=搬送中心」の時代です。


■ ③ 1960年代:救急制度のスタート

1963年に消防法が改正され、
ついに 救急業務が正式に消防の任務 となりました。

● 救急隊が全国に整備され始める
● 救急車の装備が徐々に改善
● 市民からの119番通報が増加

この頃から、救急隊が全国に広がり始めます。


■ ④ 1970〜80年代:救急救命士の必要性が高まる

交通事故が社会問題となり、
“搬送だけでは助からない命”が増えていきます。

● 重症患者への処置が現場で必要に
● 救急車の医療器具が高度化
● 医療と消防の連携が重要に

この結果、現場でより高度な処置ができる制度が求められました。


■ ⑤ 1991年:救急救命士制度の誕生(大転換)

1991年、日本で 救急救命士制度 がスタート。

● 心臓マッサージ
● 気道確保
● AEDの使用
● 薬剤投与(医師の指示下)
● 気管挿管(条件あり)

“現場で救える命”が大きく増え、
日本の救急業務が大きく進化した瞬間です。


■ ⑥ 2000年代:救急車の高度化・消火との連携強化

救急車は医療車両として進化を遂げます。

● 高規格救急車の配備
● モニター・自動心マ・ストレッチャーの改良
● 救急と消防が一体で活動
● ドクターヘリの普及(2001年〜)

“救急車+医療+消防力”の連携で、
助かる命がさらに増えました。


■ ⑦ 現代:救急需要の爆発と新たな課題

近年は、救急隊の出動が急増しています。

● 高齢化で救急搬送が増え続ける
● 軽症通報も増加し、現場が逼迫
● 救急隊員の負担が過去最大
● 救急医療との連携も難しい地域がある

一方、最新技術も導入されています。

● AIによる搬送先選定
● 遠隔医療システム
● 電気救急車・高性能通信
● 市民AED普及率の向上

“救急の未来”が急速に形になり始めています。


■ まとめ

日本の救急業務は、時代のニーズと市民の願いに応える形で発展してきました。

  1. 明治時代の搬送からスタート
  2. 戦後に専用救急車が登場
  3. 1963年に救急業務が消防の任務に
  4. 1991年:救急救命士制度で大きく進化
  5. 高規格救急車・ドクターヘリ・AIで現場が高度化
  6. 高齢化に伴う「救急需要爆増」という新課題も

救急は「社会全体で支える医療」。
歴史を知ることで、救急隊員の努力や制度の価値がより深く理解できます。

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