【防災士が解説】防災×火災防御戦術|排煙・進入・検索の基本を学ぶ【消防訓練活用】

火災現場での消防活動は、単に消火するだけではありません。
限られた時間と状況下で、排煙・進入・検索の手順を的確に行うことが、人命救助と被害拡大防止に直結します。本記事では、一般社団法人日本防災教育訓練センター代表理事であり、元福岡市消防局小隊長のサニーカミヤ氏の経験と指導内容をもとに、消防士や防災関係者が現場で活かせる火災防御戦術を詳しく解説します。


■① 火災現場到着前の準備

現場に到着する前に行うべき準備は、消火活動の安全と効率を左右します。

  • 空気呼吸器の装着
    火災中は有毒ガスや酸素不足が発生するため、到着前に確認。
  • バルブ残圧の確認
    使用前に残圧を確認し、作業中の呼吸器トラブルを防ぐ。
  • 携帯無線器のチャンネル確認
    無線での情報共有は迅速な救助活動の基本。
  • 黒煙や風向きの観察
    火勢や煙の流れを事前に把握することで安全な進入経路を判断。
  • 水利と車両配置の確認
    消火活動に必要な水源や消防車の駐車位置をあらかじめ確認。

■② 排煙の目的と手順

火災現場での排煙は、単に煙を外に出すだけではなく、以下の3つの目的があります。

  1. 視界確保:隊員の活動や救助対象者の発見を容易にする。
  2. 温度低下:室内の温度を下げ、フラッシュオーバーやバックドラフトのリスクを減らす。
  3. 有害ガス排除:一酸化炭素やその他有毒ガスの濃度を下げる。

排煙の基本ポイント:

  • 右利きの隊員が多いため、窓の破壊や段子の掛け方を工夫。
  • 排煙時は面体を着用し、炎や煙によるやけどを防止。
  • 2連ばしごを使って2階以上の窓から排煙する場合、内部状況を確認してから作業。

■③ 建物への進入手順

火災対象物への進入は安全確保が最優先です。

  • 侵入条件の確認
  • 要救助者が逃げ遅れている
  • フラッシュオーバー予防が可能
  • 床・壁・天井の落下がない
  • 放水準備が完了している
  • 進入時の注意点
  • 窓枠に残ったガラスを除去
  • 身体が十分に入れるか確認
  • 下階に要救助者がいないか確認
  • 床が抜けていないか確認

通常は排煙した同じ窓や対話部から進入します。


■④ 人命検索の手順と優先順位

屋内に進入後は、隊員間で情報を共有しながら人命検索を行います。

  • 左手を壁伝いに移動:濃煙で視認できない場合でも安全に進む。
  • 要救助者発見時の搬出ルート確認:玄関や勝手口など脱出が容易な場所から搬出。
  • 検索の優先順位:寝室 → 居間 → 炊事場 → 風呂の順が多くのケースで有効。

検索と消火のチームワークを維持するため、無線での情報共有は必須です。


■⑤ 映像シミュレーションの活用

経験の浅い消防士や新人隊員には、映像を用いたシミュレーションが効果的です。

  • 実際の火災現場を想定
    建物構造、煙の流れ、障害物の配置を映像で把握。
  • 進入・排煙・検索の手順を事前学習
    行動手順を体に覚えさせることで現場での判断が迅速化。
  • サーキット形式訓練
    障害物競走の要領で、体力と技術を同時に養成。

■⑥ 夜間火災と高齢者宅への対応

近年、夜間や高齢者宅での火災が増加しています。

  • 照明器具の準備
    投光器、発電機、ヘルメットライト、携帯ライトを活用。
  • 防火広報の徹底
    鍋のかけ忘れや暖房器具の安全使用を周知。
  • 高齢者向け避難訓練
    夜間の避難行動を想定し、事前に方法を周知。

■⑦ 日常的な火災防御意識の重要性

消防活動だけでなく、日常生活での防火意識も再発防止に直結します。

  • 可燃物の整理・保管
  • 電気設備の過負荷防止
  • 定期的な避難経路チェック

日常的な備えが、万が一の火災時に命を守る基盤となります。


■⑧ 終わりに

排煙・進入・検索の基本を理解し、映像シミュレーションや体験型訓練を活用することで、消防隊員の安全と市民の命を守る力は大きく向上します。
防災士としても、地域の防火教育や消防訓練の普及を通じて、現場での対応力を高めることが重要です。

火災防御戦術は「知識」「訓練」「体験」の三位一体で身につけることが最も効果的です。

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