「安心してください」
防災の場面で、よく使われる言葉です。
しかし、防災士として現場に立ってきた中で強く感じるのは、
安心と安全はまったく別物だという現実です。
安心していたのに被害に遭う。
不安だったけれど助かった。
災害では、この差がはっきりと表れます。
■① 「安心」は感情、「安全」は状態
まず押さえておきたいのは、
安心と安全の本質的な違いです。
・安心=心の状態
・安全=物理的・現実的な状態
安心しているから安全なのではなく、
安全が確保されているから安心できる。
この順番を取り違えると、
防災は一気に脆くなります。
■② 安心が先行すると判断が鈍る
「ここは大丈夫」
「今まで被害がなかった」
「行政が言っているから安心」
こうした安心感は、
判断を遅らせる最大の要因になります。
実際の災害現場では、
「安心していた人ほど逃げ遅れる」
という場面を何度も見てきました。
■③ 防災士から見た実際に多かった失敗
現場で多かったのは、
・ハザードマップを見ただけで安心
・備蓄が少ないのに安心
・訓練参加で安心
行動や準備が伴わない安心は、
災害時には何の役にも立ちません。
■④ 安全は「不安を前提」に作られる
本当の安全は、
「大丈夫だろう」ではなく
「最悪を想定する」ことで生まれます。
・電気が止まる
・水が使えない
・支援が来ない
この前提で備えた人ほど、
結果として落ち着いて行動できます。
■⑤ 行政側が言いにくい本音
行政は、
過度な不安を煽らないよう配慮します。
その結果、
「安心してください」という表現が
使われがちになります。
しかし裏側では、
「住民一人ひとりの判断と備えが不可欠」
という前提で対策が組まれています。
■⑥ 減災とは「被害ゼロ」を目指さない考え方
減災は、
被害をなくすことではありません。
・被害を小さくする
・命を守る
・回復を早める
安心を与えることではなく、
安全を積み上げることが目的です。
■⑦ 自律型避難が示す現実的な答え
自律型避難とは、
「誰かが言うから動く」のではなく、
「自分で判断して動く」こと。
安心に頼らず、
安全を自分で確保する行動こそが、
命を守る力になります。
■⑧ 安心を捨てるのではなく、順番を変える
安心は悪ではありません。
ただし、
・安心を目的にしない
・安全を先に作る
この順番を守ることが重要です。
安全が確保できて、
初めて安心が生まれます。
■まとめ|防災は「安心」を疑うところから始まる
防災・減災で本当に大切なのは、
気持ちを落ち着かせることではなく、
現実に備えることです。
結論:
安心を信じるな。安全を積み上げろ
防災士としての現場経験から言えるのは、
助かった人ほど、
「不安」を行動に変えていました。
不安を感じることは、
備えが始まる合図です。
そこからが、本当の防災です。

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