【元消防職員が解説】防災×自衛隊×南海トラフ|「来てくれる前提」が最も危険な備え

首都直下地震や南海トラフ地震が起きたとき、
多くの人が 最後の砦 として思い浮かべるのが自衛隊です。

しかし――
「自衛隊が来れば何とかなる」
この考え方は、現場を知る立場から言えば 非常に危険 です。

それは首都直下地震だけでなく、
南海トラフ地震ではさらに深刻 になります。


■① 首都直下地震で動く自衛隊の規模

政府想定では、首都直下地震発生時、

最大11万人の自衛隊員 が首都圏に投入されます。

これは、
・東日本大震災(約10万人)を上回る規模
・全自衛官の約半数

残る半数は、
・領空侵犯への対応
・周辺国動向への警戒
・海外邦人退避
といった 防衛警備 を同時に担います。

つまり、
災害対応に全力投入できる状態ではありません。


■② 南海トラフでは「分散」される

ここに南海トラフ地震が重なると、
状況はさらに厳しくなります。

南海トラフ地震は、

・東海
・近畿
・四国
・九州

という 超広域災害 です。

つまり自衛隊は、

・首都圏
・中京圏
・関西圏
・四国・九州沿岸

同時多発的に分散投入 されます。

結果として、

どの地域にも十分な数が届かない

という事態が現実になります。


■③ 最大の敵は「交通まひ」

首都直下でも南海トラフでも、
自衛隊の最大の敵は 道路 です。

・陥没
・倒壊建物のがれき
・放置車両
・津波による流失

これらによって、

陸路が完全に遮断される地域 が続出します。

南海トラフではさらに、

・津波浸水域が長期間孤立
・橋梁・港湾の損傷
・山間部の土砂崩れ

が重なります。


■④ ヘリ・船は万能ではない

ヘリコプターや船舶による投入も想定されていますが、

・天候に左右される
・着陸/接岸できる場所が限られる
・燃料・整備・補給が必要

という制約があります。

特に南海トラフでは、

荒天・余震・津波警戒が長期化 し、
航空・海上輸送が止まる時間帯も想定されます。


■⑤ 補給路が切れると「救助が止まる」

現場で最も恐れられるのが、

退路と補給路が確保できない状態

この状態になると、

・負傷者を運べない
・食料・水・燃料が届かない
・隊員自身が孤立・被災

という最悪の連鎖が起きます。

自衛隊が
新たな要救助者になるリスク すらあるのです。


■⑥ 勝負は「72時間」だが…

災害対応でよく言われる
72時間の壁

しかし南海トラフでは、

・孤立地域が数週間単位
・救助到達が数日〜数十日後

というケースも現実的です。

「72時間耐えれば助かる」
という前提自体が崩れます。


■⑦ 病院も同時に被災する

首都圏には
1都3県で 168の災害拠点病院 があります。

一方、南海トラフでは、

・沿岸部の病院が津波被害
・電力・水・医療資材の不足
・医療スタッフ自身も被災

という事態が広範囲で発生します。

そのため、

広域搬送が前提 になりますが、
これも道路・港湾・調整が揃わなければ成立しません。


■⑧ カギは「現場調整力」

首都直下・南海トラフの両方で共通するのが、

・自衛隊
・警察
・消防
・自治体
・DMAT

同時に動く という点です。

重要なのは階級や組織ではなく、

現場で誰が何をするか

この調整力です。

調整が遅れれば、
人数も装備も意味を失います。


■⑨ 情報共有は“命そのもの”

自衛隊内でも、

・情報が遅い
・現場に届かない

という課題は指摘されています。

南海トラフのような広域災害では、

情報の遅れ=救助の遅れ=命の損失

になります。


■⑩ 住民が知っておくべき現実

ここで最も大切な現実です。

自衛隊は万能ではありません。

・人数がいても
・装備があっても
・善意があっても

道がなく、調整が間に合わなければ
救助は届きません。

南海トラフでは特に、

「すぐ来てくれる」は期待しない前提
が必要です。


■まとめ|南海トラフほど「自助・共助」が生死を分ける

首都直下地震でも、南海トラフ地震でも、

・自衛隊は動く
・しかし全員は助けられない
・初動は地域と個人に委ねられる

この現実は変わりません。

だからこそ重要なのは、

・自助(自分と家族を守る)
・共助(地域で助け合う)
・初動の判断と行動

自衛隊が来る前の時間を、
どう生き延びるか

それが、
首都直下地震と南海トラフ地震に共通する
本当の防災です。

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