大規模災害対策というと、
これまで多くの自治体では
「想定はしているが、どこか抽象的」な計画に留まっていました。
しかし今、
被害を“数字で具体化する防災” へと大きく舵が切られようとしています。
防災士として現場を見てきた立場から、
この動きがなぜ重要なのかを解説します。
■① なぜ今「地域ごとの被災シミュレーション」なのか
国が算定する被害想定は、
どうしても広域・平均的になりがちです。
一方、実際の被害は、
・地形
・人口構成
・建物の古さ
・道路条件
といった地域差によって大きく変わります。
このズレが、
災害現場では多くの混乱を生んできました。
■② 被害を「人数」で想定するという発想
新たな指針では、
・負傷者〇人
・重傷者〇人
・要救助者〇人
というように、
被害を具体的な数値で想定します。
例えば、
負傷者1200人
→ 重傷者580人
→ 緊急救助が必要な人58人
というように、
行動に直結する数字 に落とし込む点が特徴です。
■③ 数字にすると見えてくる「足りないもの」
被害を数字で置くと、
自治体は次の問いに直面します。
・救助に必要な人員は足りるか
・救急車の台数は足りるか
・病院は受け入れ可能か
・道路は本当に使えるのか
これは机上の空論ではなく、
実行可能性の検証 です。
■④ 防災士から見た実際に多かった失敗
現場で非常に多かったのは、
「計画上はできることになっていたが、
実際にはまったく動かなかった」
というケースです。
原因の多くは、
・人数
・車両
・時間
を具体的に想定していなかったことでした。
数字を入れない計画は、
現場ではほぼ機能しません。
■⑤ 広域災害では「地域の弱点」が連鎖する
南海トラフ地震や首都直下地震では、
一つの自治体だけで完結することはありません。
ある地域で医療が不足すれば、
その負荷は隣の地域へ波及します。
今回の指針は、
地域同士の弱点をつなぎ合わせて調整する
ことも視野に入れています。
■⑥ 防災士として感じた行政側が言いにくい本音
行政は「最大限の対応をする」と言います。
しかし現実には、
すべてを一度に救う力はありません。
だからこそ、
・事前に弱点を見つける
・減らせる被害を減らす
この視点が不可欠です。
これは怠慢ではなく、
現実を直視した防災 です。
■⑦ 自助・共助の前提が変わる
被害が具体的に示されると、
住民側も現実を理解できます。
・自分の地域は何日孤立するのか
・救助が来るまでどれくらいかかるのか
これを知ることで、
自律型避難や在宅避難の判断 がしやすくなります。
■⑧ 「事前防災」は計画ではなく準備
この指針の本質は、
立派な計画書を作ることではありません。
・数字で把握する
・足りない部分を埋める
・行動を変える
このサイクルを回すことが、
本当の事前防災です。
■まとめ|数字を入れた瞬間、防災は現実になる
抽象的な被害想定は、
人を安心させますが、命は守りません。
結論:
被害を数字で考えた地域ほど、災害に強くなります。
防災士としての現場実感として、
「想定していたつもり」の地域ほど、
災害時に立ち尽くす人が多いのが現実でした。
数字は冷たいですが、
命を守るために必要な現実 です。

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