大規模災害時の被害想定は、これまで抽象的な計画に留まることが多く、現場では想定とのギャップが混乱を生んできました。
防災士の立場から言えば、数字で具体化された地域リスクを把握することは、命を守る事前防災の鍵となります。
■① 具体的な被災シミュレーションとは
政府は、各自治体の地域特性を踏まえた具体的な被災シミュレーションを行う指針策定に乗り出しています。
来年1月に有識者検討会を設置し、防災庁の主要事業として令和8年度当初予算に組み込み、自治体の取り組みを支援する枠組みを創設予定です。
■② 被害を「数字」で把握するメリット
例えば、負傷者1200人の想定がある場合、うち家屋倒壊による重傷者580人、その1割の58人が地元消防による要緊急救助者と仮定します。
このように具体的な数字に落とすことで、救助人員や車両、災害拠点病院までの道路状況、病院側の受け入れ態勢などを検証可能になります。
■③ 数値化でわかる“不足の把握”
数字に落とし込むことで、自治体は以下の点を明確に把握できます。
- 救助に必要な人員は足りるか
- 救急車の台数は足りるか
- 災害拠点病院で受け入れ可能か
- 道路やライフラインは機能するか
机上の空論ではなく、実効性の検証に直結するのです。
■④ 過去の失敗から学ぶ
現場では、「計画上は可能でも実際は無理」という失敗が多く見られました。
人数・物資・時間の具体的な想定を行わなかったことが原因です。
防災士として、数字なしの計画は現場ではほぼ機能しないことを強く実感しています。
■⑤ 広域災害での地域間調整
南海トラフ地震や首都直下地震では、一つの自治体だけで完結せず、地域間の弱点が連鎖します。
ある地域で医療や救助体制が不足すれば、隣接地域に負荷が集中します。
今回の指針は、地域同士の課題をつなぎ合わせ、広域調整を視野に入れた点が特徴です。
■⑥ 行政の現実と本音
行政は「最大限の対応を行う」と表向きは言いますが、現実には全員を同時に救えません。
事前に弱点を洗い出し、減らせる被害を減らす取り組みこそ、命を守る実務です。
これは行政の怠慢ではなく、現実的な制約によるものです。
■⑦ 自助・共助の重要性
数字で被害想定が示されることで、住民も現実を理解できます。
- 自分の地域は何日孤立する可能性があるか
- 救助が来るまでどれくらいかかるか
これを理解することで、自律型避難や在宅避難の判断が容易になります。
■■まとめ|数字で見える命のリスク
大規模災害では、計画書だけでは命は守れません。
数字で被害を把握し、足りない部分を事前に補い、行動を変えるサイクルこそが「事前防災」です。
結論:
具体的な数字で地域リスクを把握してこそ、災害時の命を守る準備が整う。
防災士として現場を見てきた経験からも、数字を用いた具体的なシミュレーションがある地域ほど、実際の災害対応で混乱を最小限に抑えられることを強く実感しています。

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