【防災士が解説】火砕流とは?“秒速100km・温度300〜800℃” 逃げ切れない最強クラスの火山災害

火山災害の中で、
最も破壊力が大きく、最も致命的なのが 火砕流(かさいりゅう) です。

一度発生すると人の力で逃げ切ることは不可能。
その特徴と危険性、備え方をわかりやすく解説します。


■ 火砕流とは?

火山の噴火によって発生する
高温のガス・火山灰・軽石・岩片が、斜面を高速で流れ下る現象。

温度:300〜800℃
速度:秒速数十m(100km/h以上も)
範囲:数km〜数十km

火山災害の中でも圧倒的な破壊力を持つ。


■ 火砕流の危険性(これが最強災害の理由)

▼ ① 温度が高すぎて近づくだけで致命傷

300℃を超えるガスが一気に襲いかかる。

▼ ② 速度が速すぎて逃げられない

車でも逃げ切れないスピード。

▼ ③ “ガス+固体”の混合体で破壊力抜群

家屋・橋・木々を根こそぎ破壊。

▼ ④ 広範囲に到達

斜面から麓の集落まで一気に押し寄せる。

▼ ⑤ 夜でも発生する

昼夜問わず突然起きるため、避難が遅れやすい。


■ 火砕流はどうやって発生する?

大きく2パターン。


① プリニー式噴火(大規模噴火)

火山の噴煙柱が高く立ち上がり、
途中で支えきれなくなると、柱の一部が崩れ落ちて火砕流に変わる。

大規模噴火時に発生しやすい


② 溶岩ドームの崩壊

火山の上に溶岩が固まり「ドーム」が形成される。
これが崩れると一気に火砕流となって流れ下る。

→ 雲仙普賢岳(1991年)の火砕流が代表例。


■ 過去の主な火砕流災害

● 雲仙普賢岳(1991):死者行方不明43名
● セントヘレンズ山(1980・米国)
● ベスビオ火山(西暦79)
● ピナトゥボ火山(1991)

いずれも甚大な被害。


■ 火砕流と分離して発生する“火砕サージ”

火砕流の“ガスが主体の部分”だけが広がる現象。
これが 火砕サージ

● 速度:火砕流以上
● 温度:非常に高い
● 広範囲に被害
● 軽いので地形を越えて広がる

→ 雲仙普賢岳で大きな被害を出したのが火砕サージ。


■ 火砕流に対して人ができる行動は?

▼ 絶対に近づかない

“火口周辺規制(レベル2〜3)”を破ると命に関わる。

▼ 噴火警報(レベル4〜5)で即避難

住民地域に影響する危険が高い。

▼ 高台だから安全とは限らない

火砕サージは地形を越える。

▼ 風向きだけでは判断しない

火砕流は地形による流れ込みが主。


■ 防災士がすすめる備え

▼ ① 噴火警戒レベルを常にチェック

特に活火山の近くに住む場合は重要。

▼ ② ハザードマップで“火砕流到達区域”を確認

火山から離れていても到達することがある。

▼ ③ 観光・登山では立入禁止を絶対に守る

シンプルだが最も効果がある命の守り方。

▼ ④ 夜間噴火に備え、家族の避難ルートを共有

火砕流は深夜でも発生する。


■ まとめ

● 火砕流=高温 × 高速 × 広範囲の最強火山災害
● 300〜800℃・時速100km以上の破壊力
● 溶岩ドーム崩壊・噴煙柱崩壊で発生
● 火砕サージはさらに広範囲に広がる危険現象
● “避難より近づかない”が唯一の対策

火山災害の中でも別格の危険性を持つ火砕流。
正しい知識を持つことで、火山地域の安全に大きくつながります。

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