【元消防職員が解説】防災×正月|餅の窒息事故と命を守る応急処置

正月の三が日は、日本で「餅による窒息死」が最も多く発生する時期です。毎年のように注意喚起が行われていますが、事故は後を絶ちません。餅は日本の正月文化に欠かせない一方、命に直結するリスクを持つ食品でもあります。災害や救急の現場視点から、正月に本当に必要な備えを整理します。


■① 餅の窒息事故が三が日に集中する理由

人口動態調査を用いた研究では、餅による窒息死の約4割が1月に集中し、特に元旦から3日までの三が日に多発しています。家族が集まり、普段より多く餅を食べる機会が増えることが大きな要因です。


■② 餅の本当の危険性は「大きさ」ではない

「餅は小さく切れば安全」と思われがちですが、結論としては小さく切っても詰まります。餅の危険性はサイズではなく、強い粘着性にあります。喉や気道に貼り付くことで、簡単には取れなくなるのが最大の特徴です。


■③ 高齢者と子どもは特にリスクが高い

高齢者は、噛む力や飲み込む力が低下していても、自分では気づかないまま通常の食事を続けていることがあります。また、3歳頃までの子どもも気道が細く、窒息のリスクが高い年代です。餅だけでなく、おかゆなど柔らかい食品でも窒息は起こります。


■④ 窒息は数分で命に関わる

食べ物が気道に詰まり呼吸が妨げられると、体内の酸素は急速に不足します。およそ5分で心停止に至る可能性があり、対応が遅れると命を救うことは極めて困難になります。救急車を待つだけでは間に合わないケースも少なくありません。


■⑤ 知っておきたい気道異物除去の基本

万一に備え、応急処置の手順を事前に知っておくことが重要です。
・1歳未満の乳児:背部叩打法5回と胸部突き上げ法5回を交互に
・1歳以上の子ども・成人・高齢者:背部叩打法5回と腹部突き上げ法5回を交互に
正しい手順を知っているかどうかで、結果は大きく変わります。


■⑥ 正月の食卓でできる現実的な対策

餅を小さく切る、よく噛むことは基本ですが、それだけでは不十分です。
・一人で食べさせない
・食事中は会話やテレビに集中しすぎない
・水分を一緒に取る
こうした環境づくりが事故を防ぎます。


■⑦ 「餅を卒業する」という選択肢

高齢になると、リスクそのものを正しく認識できなくなる場合があります。無理に伝統を守るよりも、「今年から餅は食べない」という判断も立派な減災行動です。命を守ることが最優先です。


■⑧ 今日できる最小の備え

正月前にできる備えは多くありません。
・家族で窒息時の対応を一度確認する
・餅を出すかどうかを事前に話し合う
・救急車を呼ぶ判断を迷わない
これだけでも、命を守る確率は確実に高まります。


餅による窒息事故は、毎年「分かっているのに起きる事故」です。防災とは災害だけでなく、日常に潜む命のリスクから目を背けないことでもあります。正月を安心して迎えるために、今年こそ「備え」を行動に変しましょう。

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