【防災士が解説】防災×復興住宅|入居後に進む「見えない孤立」をどう防ぐか

能登半島地震から2年が経過し、仮設住宅の整備や公費解体は着実に進んでいます。一方で、復興の次の段階である「災害公営住宅」への移行が本格化する中、入居後の孤立や健康悪化が大きな課題として浮かび上がっています。東日本大震災や熊本地震でも繰り返されてきたこの問題は、決して過去の教訓ではありません。被災地対応に携わってきた立場から、この課題の本質と、防災の視点で考えるべきポイントを整理します。


■① 復興が進むほど「孤立」は見えにくくなる

被災地では、がれき撤去や住宅建設といった目に見える復興が進むほど、「人の孤立」は表に出にくくなります。現地対応の中でも、住宅が整った後に「誰にも会わなくなった」「話す機会が減った」という声が増えていくのを何度も見てきました。復興の進捗と、心身の回復は必ずしも比例しません。


■② 仮設住宅から恒久住宅への移行が転機になる

仮設住宅では、否応なく人の気配があります。一方、災害公営住宅では生活が個別化し、静かになります。東日本や熊本の被災地でも、入居後に外出頻度が減り、体調を崩す高齢者が増えた事例が報告されてきました。住まいが「安心」になった瞬間に、孤立のリスクが高まることがあります。


■③ 高齢者ほど「困っている」と言えない

長期の被災生活を経た高齢者ほど、「迷惑をかけたくない」「もう十分支援してもらった」という思いから、体調不良や不安を口にしなくなります。被災地対応の現場でも、異変に気づいたときには、すでに深刻化していたケースを多く経験しました。孤立は静かに進行します。


■④ 過疎地域では「集まる場」そのものが不足する

能登半島北部のような中山間地では、そもそも人が集まれる場所が限られています。住宅を建てることと、暮らしを再建することは別問題です。復興住宅の配置や動線次第で、外出のしやすさや交流の頻度は大きく変わります。防災は建物単体では完結しません。


■⑤ 東日本・熊本の教訓は「つながりを設計すること」

過去の大規模災害で明らかになったのは、「自然発生的なコミュニティー」に期待しすぎないことです。入居後に自然につながるケースは一部に限られます。見守り、声かけ、集まるきっかけを意図的に設計していた地域ほど、孤立が深刻化しにくい傾向がありました。


■⑥ 防災は「建てて終わり」ではない

災害公営住宅は、防災のゴールではありません。被災地で実感してきたのは、「住み始めてからが本当の防災」という現実です。健康悪化や孤立死は、災害の二次被害とも言えます。ハード整備と同時に、ソフト面の防災が不可欠です。


■⑦ 今後に向けて考えるべき現実的な視点

・入居直後からの定期的な声かけ
・「集まらなくてもつながれる」仕組みづくり
・外出しやすい動線や共用スペースの活用
・高齢者を前提とした生活設計
・孤立を前提にした見守り体制

これらは特別な施策ではなく、被災地の経験から導かれた現実的な防災です。


■⑧ 復興の成否は「人の暮らし」で決まる

住宅が完成し、数字上の復興が進んでも、人が元気を失ってしまっては本当の復興とは言えません。被災地対応の中で感じてきたのは、「つながりを失わなかった地域ほど、回復力が高かった」という事実です。防災の視点で復興住宅を考えることは、これからの能登、そして将来の被災地すべてに共通する課題です。

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