【防災士が解説】防災×南海トラフ|巨大地震の前兆を捉える「ひずみ計」とは何か

最大震度7を観測した能登半島地震の発生から2年が経過しました。
同じ年の8月には、宮崎県の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されています。

こうした状況の中、南海トラフ巨大地震の前兆となる可能性がある地殻変動「ゆっくりすべり」を捉える観測機器として注目されているのが「ひずみ計」です。


■① 「ゆっくりすべり」とは何か

「ゆっくりすべり(スロースリップ)」とは、私たちが感じる揺れを伴わず、地下深くでゆっくりとプレートが動く現象です。

通常の地震は一気に断層がずれて強い揺れを起こしますが、
ゆっくりすべりは数日から数か月かけて、じわじわと進行します。

この現象自体がすぐに大地震を起こすわけではありませんが、
巨大地震の発生が近づくと、その起こり方が変化する可能性が指摘されています。


■② 「ひずみ計」とはどんな装置か

今回、延岡市北方町に設置された「ひずみ計」は、地下深くの岩盤のわずかな伸び縮みを捉える観測機器です。

その精度は非常に高く、
1000キロメートルの距離が1ミリ伸び縮みする変化を検出できるとされています。

人間の感覚では到底気づけない変化を、24時間体制で記録し続ける装置です。


■③ なぜ南海トラフで重要なのか

南海トラフ巨大地震は、東海から九州沖にかけての広い範囲で発生が想定されています。

産業技術総合研究所では、

・東海
・紀伊半島
・四国
・九州

にかけて、おおむね40〜50キロ間隔で「ひずみ計」を設置しており、今回の延岡市を含めて約20か所に及びます。

広域に観測網を張ることで、
「どこで」「どのように」地殻が変化しているのかを立体的に把握することが目的です。


■④ 前兆を見逃さないための“平常時の観測”

重要なのは、「異常」を見つけるためには「平常」を知っておく必要があるという点です。

研究機関では、

・通常時に起きているゆっくりすべりの特徴
・周期や規模の傾向

を正確に把握し、その変化を長期的に比較しています。

巨大地震の直前には、
ゆっくりすべりの発生場所や速度、範囲が変化する可能性があるとするシミュレーションもあり、
その兆候を捉えるための基礎データを積み重ねている段階です。


■⑤ 「観測=予知」ではないという現実

ここで大切なのは、「ひずみ計があるから地震が予知できる」という話ではないということです。

現時点では、

・地震の正確な発生時刻
・規模
・場所

を事前に断定することはできません。

ただし、
リスクの高まりを早く察知し、警戒レベルを判断する材料を増やす
という点で、ひずみ計の役割は非常に重要です。


■⑥ 私たちの防災行動はどう変わるのか

観測体制が強化されても、
最終的に命を守る行動を取るのは私たち一人ひとりです。

・臨時情報が出たらどう行動するか
・家族と連絡が取れない場合どうするか
・自宅や職場が危険な場所か

こうしたことを、平時から決めておくことが「事前防災」です。


■⑦ 技術と備えはセットで考える

高度な観測機器は、社会全体の安全性を高めてくれます。
しかし、それだけで被害が防げるわけではありません。

技術が積み重ねてくれる「気づき」を、
私たちが行動に変えられるかどうかが、被害の大きさを左右します。


■⑧ 前兆を「知って終わり」にしないために

「ひずみ計」や「ゆっくりすべり」という言葉を知ることは、防災の第一歩です。

その先にあるのは、

・自分の地域はどうなのか
・情報が出たときに迷わず動けるか

を考えること。

見えない地下の変化を見守る観測網と、
日常の中で積み重ねる小さな備え。
その両輪があってこそ、巨大地震への備えは現実の力になります。

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