【防災士が解説】防災×エスタブリッシュメント③|「責任の所在」が避難を遅らせる構造

前回は、「安心を配る側」が結果的に判断停止を生む構造について解説しました。
今回はさらに核心に踏み込みます。

テーマは
「責任の所在が不明確なとき、人はなぜ動けなくなるのか」 です。


■① 災害時に最も重くのしかかるもの

災害対応で、実は最も強いブレーキになるのがこれです。

・誰が責任を取るのか
・後で問題にならないか
・判断が間違っていたらどうするか

この「責任への恐怖」は、
現場・行政・組織のすべてに共通します。


■② エスタブリッシュメントは“責任回避装置”でもある

既存の制度や組織は、本来こうした目的を持っています。

・責任を分散する
・手順を決める
・判断を合議にする

これは平時には非常に有効です。
しかし、時間との勝負になる災害時 には弱点になります。


■③ なぜ「判断」が上に上がるのか

現場でよく起こる流れです。

・判断が必要になる
・「自分の判断でいいのか?」と迷う
・上に確認する
・上もさらに上に確認する

その間に、状況は悪化します。

これは能力不足ではありません。
責任を背負わされる構造 がそうさせているのです。


■④ 「想定外」を避けたい心理

エスタブリッシュメントは、
「想定外」という言葉を極端に嫌います。

なぜなら、

・説明ができない
・責任を問われる
・批判されやすい

からです。

その結果、

・前例のない判断を避ける
・強い表現を使わない
・決断を遅らせる

という行動につながります。


■⑤ 住民側にも起こる“責任委託”

この構造は、住民側にも影響します。

・避難しなくてよかったら誰の責任?
・避難して何もなかったら損じゃない?
・指示が出ていないから動かない

これは無意識に
「判断の責任を外に預けている状態」です。


■⑥ 自律型避難とは「責任を引き取る」こと

自律型避難とは、

・勝手に行動すること
・ルールを無視すること

ではありません。

自分と家族の命に関する判断責任を、自分で引き取ること
これが本質です。


■⑦ 判断基準を事前に決める意味

災害時に即断できる人は、
例外なく「事前に決めています」。

・雨量が〇〇を超えたら移動
・夜になったら迷わず退避
・高齢者が不安を感じたら早めに行動

これらは完璧でなくていい。
「迷わない基準」があることが重要です。


■⑧ 行政と個人は役割が違う

行政は、

・全体最適
・公平性
・説明責任

を背負っています。

一方、個人は、

・自分と家族の安全
・時間的余裕
・柔軟な判断

を優先できます。

同じ判断基準で動く必要はありません。


■⑨ 「早く逃げた人」は責められがち

実際の被災地では、

・早く避難した人
・独自判断で動いた人

が、後から

・大げさ
・空振り
・自己判断が過ぎる

と言われることがあります。

しかし、生き延びた事実は変わりません。


■⑩ 防災で最も大切な覚悟

防災で必要なのは、知識よりもこの覚悟です。

「誰かのせいにできない判断を、自分で選ぶ」

エスタブリッシュメントは否定すべき存在ではありません。
ただし、それにすべてを委ねた瞬間、判断は遅れます。

制度を使いながら、
最後は自分で決める。

それが、現実的で壊れにくい防災です。

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