地震・倒壊・土砂災害では、
人がコンクリートに挟まれたり、埋まったりして
「コンクリートを破壊して救助する」 場面が発生します。
これは消防救助の中でも最上級の難易度で、
専門の器具・安全管理・力学の知識を総動員して行います。
■ 専門用語で言うと?
コンクリート破壊を伴う救助は
救助の正式名称では
**「破壊救助(はかいきゅうじょ)」
「Breaching & Breaking(突破・破壊)」**
と呼ばれます。
国際救助(USAR)の分類では
“突破・破砕”を意味するコア技術です。
■ コンクリート破壊救助で使う主な器具
コンクリートを破るには、大きく3種類のアプローチがあります。
① 切断系
- コンクリートカッター(ディスクカッター)
- ウォールソー
- チェーンソー(ダイヤモンド刃)
- レシプロソー(救助用ブレード)
→ 正確に切り込みを入れて「面」を作り、瓦礫を取り除く。
② 破砕・穿孔系
- 油圧式スプレッダー
- ジャッキ
- 破砕機(ブレーカー)
- チッピングハンマー
- 削孔機(ドリル)
→ 穴をあけ、力を集中させて崩壊部を破壊・除去。
③ 支持・安定化(最重要)
- クサビ・木材
- 支柱(ショアリング)
- パレットなどでの安定化
→ これを入れずに破壊すると、二次崩落で要救助者が死亡する
→ プロが最も時間をかける部分。
■ コンクリート破壊は「力任せ」ではできない
救助隊がやっているのは
“壊す”のではなく
「必要な部分だけ、計算して壊す」 こと。
ポイントは3つ。
● ① 「力を逃がす方向」を読む
構造がどこへ倒れたいかを理解し、
逆らわず、最も安全な方向へ力を流す。
● ② 「支え」を先に作る
破壊前に
- 支柱
- クサビ
- パレット
などを入れ、安全性を“人工的に作る”。
● ③ 少しずつ、段階的に壊す
一気に破ると崩落の危険がある。
「部分破壊 → 支持 → 破壊 → 支持」を繰り返す。
■ 最も危険なのは“救助者自身の圧死”
過去の事例でも
- 余震
- 構造物の予期せぬ落下
- ジャッキの滑り
で救助者が巻き込まれる事故が多い。
安全管理の徹底が最大の救助。
■ コンクリート破壊救助の代表的な手順(簡易版)
- 被災者の位置を特定(声・AEDパッド・内視鏡カメラ)
- 周囲を安定化(支持材を入れる)
- 破壊開始点(アクセス点)を決める
- 切断・破砕で開口部を作成
- 空間を拡大(油圧器具・ジャッキ)
- 被災者へのアクセス確保
- 除去・救出
- 二次崩落防止を維持したまま撤収
■ 家庭で出来る“コンクリート破壊救助”は?
結論:
家庭では絶対に真似してはいけません。
理由:
- 道具が危険
- 頭上の崩落リスク
- 支え・安定化が素人では不可能
- 実際は音・粉塵・振動による二次被害あり
ただし、知識として
「壊せば壊すほど危険が増す」
という理解は極めて重要です。
■ まとめ
コンクリート破壊救助は、
災害現場において最も高度で、最も危険な救助技術。
- 専門名称は 破壊救助(Breaching & Breaking)
- 切断・破砕・支持の3つの技術が中心
- “力任せ”ではなく力学と安全管理の技術
- 安定化(支持)が最重要
- 一般市民が行うのは非常に危険
プロの救助隊が総力を挙げて行う、
人命救助の最終ステップ とも言える作業です。

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