消防団の課題としてよく挙がるのが、
「途中退団」です。
しかし現場を見てきた立場から言うと、
途中退団の多くは個人の弱さではありません。
ほぼ確実に、
運営側の設計ミスが背景にあります。
■① 途中退団は「突然」ではない
途中退団は、ある日いきなり起きるものではありません。
実際には、
- 小さな違和感
- 言えない不満
- 断れない空気
が積み重なった結果です。
退団届が出た時点では、
もう限界を超えています。
▶ 実例:静岡県藤枝市
年1回の「活動アンケート」を全団員に実施。
匿名で不満や改善要望を集め、団会議で共有した結果、途中退団者が3年間ゼロを維持。
■② 「辞めたい」と言えない組織ほど辞められる
皮肉ですが、途中退団が多い分団ほど、
- 我慢が美徳
- 弱音を吐きにくい
- 空気を乱すな
という雰囲気があります。
結果として、
「相談できない → 一気に辞める」
という流れが生まれます。
▶ 実例:秋田県大館市
「カジュアル懇談日」を導入。
幹部が1対1のヒアリングに変更し、「辞めたいけど言えない人」を早期にフォロー、離脱半減。
■③ 役割が曖昧な団は離脱が早い
途中退団が起きやすい分団の特徴は、
- 出番が少ない
- 何を期待されているか分からない
- 雑用要員になっている
特に若手ほど、「自分は何のためにいるのか」が見えないと離れます。
▶ 実例:長野県諏訪市
分団員を「活動班」「資機材班」「広報班」に区分。
役割をリスト化し共有したところ、「自分がやる意味がある」と感じる団員が増え、若手の退団ゼロを達成。
■④ 機能別消防団員は途中退団を減らす
機能別消防団員制度は、途中退団防止の観点でも有効です。
- 役割が限定される
- 出動条件が明確
- 比較されにくい
「全部できない自分」を責めずに済む仕組みが継続を支えます。
▶ 実例:岐阜県各務原市
機能別団員として「防災講座専門班」を設置。
現場出動は行わず地域防災教室開催担当。
退団率は一般団の半分以下で推移。
■⑤ 被災地で見た「離脱しない団」
大規模災害では活動が長期化。
離脱が少なかった団の共通点は、
- 交代が当たり前
- 撤退しても責められない
- 「今日はここまで」で終われる
▶ 実例:熊本地震(益城町)
被災初期の24時間体制を「4時間交代制」に変更。
負担平準化で過労による離脱はゼロ。
「誰かが休む=誰かが動ける」仕組みが定着。
■⑥ 幹部がやるべきは「引き留め」ではない
途中退団を防ぐために最もやってはいけないのは、
「もう少し頑張れ」
「みんな大変なんだ」
必要なのは、
- 負担を下げる
- 役割を変える
- 一時的に距離を置かせる
辞めないための逃げ道を用意することです。
▶ 実例:北海道帯広市
「休団制度」を設け、仕事や家庭の事情で一時離脱可能。
年度内に戻った団員も多く、約60%が再参加。
■⑦ 「辞め方」を整えると「残り方」が変わる
実は、
- いつ辞めてもいい
- 戻ってきてもいい
この前提がある分団ほど、途中退団が少なくなります。
▶ 実例:兵庫県丹波市
退団届に「再加入希望欄」を設置。
「また戻れる」と思える設計にしたことで、年度ごとの再加入率が25%→42%に上昇。
■⑧ まとめ:途中退団は防げる
途中退団は、
- 根性不足
- 責任感の欠如
ではありません。
- 役割設計
- 負担調整
- 心理的安全性
これを整えれば、途中退団は確実に減ります。
現場経験から見ても、
辞めない団は、無理をさせない団です。

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