大規模災害が発生したとき、被災地の消防力だけで対応することは現実的ではありません。
その前提に立って全国で整備されているのが「緊急消防援助隊」です。
この部隊の実効性を支えているのが、全国6ブロックで行われるブロック訓練です。
これは単なる訓練ではなく、日本の防災体制を支える重要な検証の場でもあります。
■① 緊急消防援助隊ブロック訓練とは
緊急消防援助隊のブロック訓練は、全国を6ブロックに分けて実施される合同訓練です。
・北海道・東北
・関東
・中部
・近畿
・中国・四国
・九州
それぞれの地域特性を踏まえ、大規模災害時の広域消防支援体制を確認・強化することが目的です。
■② 訓練の目的は「現場」だけではない
この訓練の目的は、単に消火や救助技術を確認することではありません。
・指揮命令系統の確立
・他機関(自衛隊、DMAT、警察)との連携
・受援側となる都道府県・市町村の体制確認
特に重要なのが、「受け入れる側」の準備です。
支援が来ても、受け入れられなければ意味がありません。
■③ 図上訓練で見える判断力の差
図上訓練では、被害想定を基に、
・どの地域に、どの部隊を送るか
・どの時点で応援要請を出すか
・消防力がどこで不足するか
といった判断を行います。
運営に関わった経験上、ここで差が出るのは「判断の速さ」と「情報整理力」です。
現場経験が豊富なほど、被害の広がり方を具体的にイメージできます。
■④ 実動訓練で浮き彫りになる課題
実動訓練では、陸路だけでなく空路・海路での部隊進出も行われます。
・長距離移動後の活動継続性
・宿営地の確保
・燃料・食料・資機材の管理
実際の運営では、「現場に着いてから困ること」が必ず出てきます。
訓練は、その弱点をあらかじめ炙り出すためのものです。
■⑤ 関係機関との連携は訓練でしか磨けない
大規模災害では、消防だけで完結することはありません。
・航空運用による情報収集
・道路啓開による進出ルート確保
・多数傷病者対応
これらは、自衛隊・警察・DMATとの連携が前提になります。
書面上の取り決めだけではなく、「顔が見える関係」を作ることが訓練の大きな価値です。
■⑥ 受援側の立場で見える現実
九州ブロックなどの訓練では、「被災県側」として部隊を受け入れる想定も行われます。
運営側として関わった経験では、
・どこに部隊を集結させるか
・情報をどう整理して渡すか
・現地職員の疲労をどう管理するか
といった課題が必ず浮かび上がります。
「応援をもらう準備」も、防災の重要な要素です。
■⑦ なぜ毎年訓練を続けるのか
緊急消防援助隊のブロック訓練は、平成8年度から毎年実施されています。
災害の形が変わり、社会状況が変わっても、訓練を止めない理由があります。
それは、
「想定外は、準備不足の別名」
だからです。
■⑧ 防災としての結論
緊急消防援助隊のブロック訓練は、派手な成果を見せる場ではありません。
むしろ、うまくいかなかった点を見つけるための場です。
現場を知る人間ほど、
「訓練で失敗できてよかった」
と感じます。
防災とは、災害が起きた瞬間の対応力だけでなく、
その前にどれだけ現実を想定して準備できているかです。
ブロック訓練は、日本の防災力を静かに支え続ける土台です。

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