危険物の移送や運搬は、私たちの社会を支える一方で、ひとたび事故が発生すれば国民生活に甚大な影響を及ぼします。
そのリスクを最小限に抑えるために実施されるのが、移動タンク貯蔵所等に対する立入検査です。
今回示された実施要領は、事故を「起こさない防災」を現場レベルで徹底するための重要な指針と言えます。
■① 移動タンク貯蔵所事故の危険性
危険物を積載した車両の事故は、火災や爆発、有毒ガスの発生などに直結します。
さらに、幹線道路での事故は交通遮断を引き起こし、物流や経済活動にも深刻な影響を与えます。
現場で多くの災害対応に携わってきた立場から見ても、危険物事故は「想定外」では済まされない災害です。
■② 立入検査実施の目的
今回の立入検査の最大の目的は、
・事故の未然防止
・危険物取扱者の遵法意識の向上
にあります。
単なる形式的な確認ではなく、「ルールが守られているか」「安全が現場で機能しているか」を直接確認することが狙いです。
■③ 立入検査の期間と場所
立入検査は、令和7年11月1日から11月30日を中心に実施されます。
実施場所は、
・道路上
・移動タンク貯蔵所の常置場所
・危険物の積卸し場所
など、実際の運用実態に即した場所が選定されます。
特に道路上での検査は、警察と連携し合同で行うことが原則とされています。
■④ 検査対象となる車両
立入検査の対象は、
・移動タンク貯蔵所
・危険物運搬車両
です。
これは、貯蔵・移送だけでなく、一般の運搬段階における事故リスクも重視していることを意味します。
■⑤ 移動タンク貯蔵所の重点確認事項
昨年度の検査結果を踏まえ、特に重点的に確認されるのは次の点です。
・常置場所や注入ノズル等の無許可変更
・定期点検(特に5年以内ごとの漏れ点検)の実施状況
・電気設備や接地導線の維持管理
・危険物取扱者の保安講習受講、免状携行、乗車状況
これらはいずれも、事故防止の基本でありながら、現場で軽視されがちなポイントです。
■⑥ 危険物運搬車両に求められる安全管理
危険物運搬車両については、
・危険物に適応した消火設備の設置
・転倒や落下を防ぐ適切な積載方法
が重点確認事項とされています。
運搬中のわずかな油断が、重大事故につながるため、日常管理の徹底が不可欠です。
■⑦ イエローカードの重要性
ガソリンや灯油等を除く危険物については、イエローカードの携行状況も確認されます。
イエローカードには、事故時の初期対応や消防機関への情報提供に必要な情報が記載されています。
現場では、このカードの有無が初動対応の質を大きく左右します。
■⑧ 防災の視点で見る立入検査の意味
立入検査は、違反を見つけるためだけのものではありません。
本質は、
「事故を起こさない状態を維持できているか」
を社会全体で確認する行為です。
危険物輸送の安全確保は、目立たない分野ですが、国民の命と生活を守る基盤です。
この地道な取組こそが、防災の本質と言えます。

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