「昇進おめでとう」「ありがとうございます。頑張ります」
そう答えた30代社員が、わずか1週間後に辞表を提出した――。
この出来事は、単なる人事やキャリアの話ではありません。
防災の視点で見ると、これは組織が静かに壊れていく“予兆”でもあります。
災害に強い組織とは、設備やマニュアルだけでなく、
「人が残り、判断し、支え合える構造」を持っている組織です。
■① 昇進=祝福ではなく「危険信号」になった理由
今回のケースで象徴的なのは、
昇進の打診が「期待」ではなく「リスク」として受け取られていた点です。
本人の目に映っていた管理職像は、
・仕事と責任が集中する
・常にトラブル対応に追われる
・余裕がなく、疲弊している
・責任に見合う報酬や裁量がない
この状態は、防災で言えば単独行動を強いられる指揮者と同じです。
■② 人材流出は「災害時」に一気に表面化する
平時には回っている組織でも、
・中核人材の退職
・リーダー層の忌避
・責任の集中
が重なると、災害時に一気に破綻します。
防災現場でも、
「できる人に任せきり」
「責任を一部に集中」
した組織は、想定外の事態に弱くなります。
■③ プレイヤーとリーダーの役割は“別の仕事”
記事が示している本質は明確です。
プレイヤーは、
・自分の行動=成果
・努力と結果が近い
リーダーは、
・人と仕組みで成果を出す
・判断の再現性をつくる
・失敗も引き受ける
しかし多くの職場では、
この違いが事前に共有されていません。
■④ 見えない「リーダーの価値」が伝わらない危険
プレイヤーの立場から見えるのは、
・忙しさ
・責任
・叱責
といった表層だけです。
リーダーの本質である
・組織を守る役割
・判断の重み
・人を育てる影響力
は、意識的に言語化しなければ見えません。
これは、防災でいう「指揮の意図を共有しない現場」と同じです。
■⑤ 「割に合わない」は合理的な判断
若手社員は感情で辞めていません。
彼らは事実を見ています。
・責任だけ増える
・報酬や裁量は限定的
・支援や余白がない
防災でも同じです。
無理な任務を与えられ続ける隊員は、現場を離れます。
■⑥ 昇進を“選べない構造”は危険
昇進が
「断れない」
「拒否=評価低下」
となると、人は沈黙か離脱を選びます。
災害対応で最も危険なのは、
「本当のリスクが上に上がらない状態」です。
辞表は、突然出されたのではありません。
ずっと前から出されていた“無言のサイン”です。
■⑦ 防災的に見た「強い組織」の条件
防災に強い組織は、
・責任が分散されている
・判断が共有されている
・役割の意味が言語化されている
・引き受ける価値が見える
昇進が「罰ゲーム」に見える組織は、
危機対応でも同じ構造的弱点を抱えています。
■⑧ 今日できる最小の改善行動
・リーダーの仕事を言語化する
・負担だけでなく裁量と支援を示す
・「選べる昇進」にする
・断った人を責めない
人は、納得できる役割なら逃げません。
昇進を拒まれたことが問題なのではありません。
昇進が“危険”に見えてしまう組織構造こそが問題です。
防災は、人が残る設計から始まります。
それは、日常の組織づくりと地続きです。

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