閉山期間中の富士山で、再び遭難事故が発生しました。冬季閉鎖中にもかかわらず入山し、転倒・滑落により救助要請に至る事例は後を絶ちません。これは個人の登山判断にとどまらず、社会全体の防災課題として捉える必要があります。
■① 閉山中の富士山で発生した遭難事案
2025年1月18日、富士山富士宮口8合目付近で、単独登山をしていた中国籍の男性が下山中に転倒し、右足首を負傷。「歩けない」と119番通報しました。
警察と消防の山岳遭難救助隊は現地に到着したものの、男性は自力歩行ができず、後発隊の到着を待って5合目まで搬送する対応となりました。
■② 冬季の富士山は「登山道」ではない
富士山は現在、全登山道が冬季閉鎖期間中です。
冬季の富士山は、
・積雪と凍結による滑落リスク
・強風による体感温度の急低下
・酸素濃度の低下
・アイスバーンと落石
といった、夏山とは全く異なる環境となります。
警察も公式に「開山期以外の登山は非常に危険」と繰り返し警告しています。
■③ 法律上も「立入禁止」である現実
富士山5合目から山頂までの登山道は、道路法第46条に基づき冬季閉鎖されています。
違反した場合、
・6か月以下の拘禁刑
・または30万円以下の罰金
に処される可能性があります。
つまり、冬季登山は「自己責任」以前に、法令違反となる行為です。
■④ 救助は命懸けで行われている
閉山期の救助活動は、救助する側にとっても極めて危険です。
積雪・強風・視界不良の中での救助は、二次遭難のリスクを常に伴います。富士宮市長も「隊員も命懸け」「富士山を甘く見ている」と強い危機感を示し、閉山期の救助有料化を訴えています。
■⑤ なぜ事故は繰り返されるのか
多くの冬季遭難に共通する要因は、
・閉山の意味を理解していない
・日本の山岳環境への認識不足
・計画書未提出
・単独行動
・装備・知識の不足
です。
「登れる」「写真が撮れる」ではなく、「帰れるかどうか」が判断基準でなければなりません。
■⑥ 防災の視点で考える再発防止策
今後必要なのは、注意喚起だけでなく実効性のある対策です。
・多言語による明確な閉山表示
・立入制限の厳格化
・冬季救助の有料化検討
・実際の救助映像を用いた啓発
「知らなかった」を前提にしない仕組みづくりが求められています。
■⑦ 今日できる最小の防災判断
富士山に限らず、山に入る前に自問してほしいことがあります。
・そこは本当に「登っていい場所」か
・今の季節に対応した知識と装備があるか
・単独での行動になっていないか
・万一の救助が他人の命を危険に晒すことを理解しているか
一つでも不安があれば、入山しない判断こそが最善の防災行動です。
富士山は、日本一高い山であると同時に、日本でもっとも遭難が多い山の一つです。
防災とは「挑戦を止めること」ではありません。
命を守る判断を優先することです。
閉山期の富士山は、登る場所ではなく、守るべき場所です。

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