【防災士が解説】災害時デマの正体と見抜き方|防災×デマ対策

大規模災害の発生直後、被災地を混乱させるもう一つの「災害」があります。それが、デマや真偽不明情報です。阪神・淡路大震災から30年以上が経過した現在、SNSや生成AIの登場により、その脅威は格段に高まっています。


■① 阪神大震災で実際に起きた「デマとの戦い」

1995年の阪神・淡路大震災では、神戸海洋気象台(現・神戸地方気象台)に「地震雲を見た」「次はいつ地震が来るのか」といった電話が殺到しました。発災から3日後、電話は昼夜を問わず鳴り続け、職員約30人が交代で24時間対応する異常事態となりました。

日時や場所を特定した地震予知は、現在の科学では不可能です。地震雲についても、科学的な裏付けはありません。にもかかわらず、不安と恐怖が冷静な判断を奪い、多くの人が「確かな答え」を求めて気象台に殺到したのです。


■② デマは「情報の空白」に入り込む

当時、気象台が徹底したのは、正確な情報を“出し続ける”ことでした。
全ての電話機に説明用メモを貼り、科学的根拠を統一して伝える体制を構築。電話が落ち着くまでに、約1か月を要しました。

デマは、恐怖そのものよりも「分からない」という空白につけ込んで広がります。
情報が不足するほど、人は不確かな話にすがってしまうのです。


■③ 火災デマが広がった本当の理由

阪神大震災では、「被災者が火災保険目当てで放火している」といううわさも広がりました。しかし、実際に確認された放火は157件中わずか1件。多くは、停電復旧時に発生した「通電火災」でした。

当時、通電火災という知識が一般に浸透していなかったことが、デマ拡散を加速させました。
正確な知識がなければ、現実を誤って解釈してしまう典型例です。


■④ SNS時代で激変したデマの拡散力

東日本大震災ではチェーンメール、能登半島地震ではSNS上の偽の救助要請。
デマの形は時代とともに進化しています。

現在は、X(旧Twitter)やTikTokを通じて、海外からもデマが発信され、拡散速度は爆発的です。善意のつもりで拡散した情報が、結果として救助活動や行政対応を妨げるケースも発生しています。


■⑤ 生成AIがもたらす新たなリスク

近年、生成AIによる精巧な偽画像・偽動画が登場しています。
実際に、地震直後に「建物が崩落した」「地面が割れた」とする偽映像がSNSに投稿され、行政が注意喚起を行う事例が相次ぎました。

映像は「事実に見える」ため、文章よりも強い影響力を持ちます。
これからの災害時には、「映像=真実」と思い込むこと自体が危険になります。


■⑥ デマを見抜くための基本行動

災害時に最も重要なのは、次の姿勢です。

・情報の出所を必ず確認する
・公的機関や新聞社など複数の信頼できる情報と照合する
・感情を煽る情報ほど一度立ち止まる
・「善意の拡散」が被害を拡大する可能性を意識する

不安なときほど、判断は慎重にする必要があります。


■⑦ 防災に必要なのは「情報免疫」

専門家は、ワクチンになぞらえて「デマへの免疫」を高める必要性を指摘しています。
事前に、どのようなデマが出やすいかを知っておくだけでも、被害は大きく減らせます。

防災とは、物資や避難だけでなく、「正しい情報を選び取る力」を鍛えることでもあります。


災害時、最も怖いのは「知らないこと」そのものです。
正しい情報を待ち、確かめ、広げない勇気を持つこと。
それが、命と現場を守る、現代の防災行動です。

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