【元消防職員が解説】屋外貯蔵タンク検査の新基準と渦電流探傷試験|防災×危険物施設

令和7年12月24日から、「危険物の規制に関する規則」の一部改正が施行され、特定屋外貯蔵タンクの底部溶接継手に対する新たな検査方法として「渦電流探傷試験」が正式に追加されました。これは、危険物施設における事故防止と予防保全の高度化を目的とした重要な制度改正です。


■① 今回の規則改正のポイント

今回の改正では、特定屋外貯蔵タンクの次の溶接継手部分が対象となります。

・側板とアニュラ板
・アニュラ板同士
・アニュラ板と底板
・底板同士

これら「底部の溶接継手」に対し、従来の非破壊検査手法に加え、渦電流探傷試験を新たに適用できるようになりました。


■② 渦電流探傷試験とは何か

渦電流探傷試験は、金属に電磁誘導を利用して微細な欠陥を検出する非破壊検査手法です。底部溶接継手を走査した際に生じる電気的信号を解析し、健全性を評価します。

合格基準は次のとおりです。

・検出信号が、対比試験片に設けた基準傷を走査した際の信号を超えないこと
・幾何学的影響やノイズなどによる疑似信号は、合否判定の対象外とする

これにより、不要な補修や過剰評価を防ぎつつ、実質的な安全性を確保する運用が可能となります。


■③ ガイドラインに基づく運用の重要性

今回の制度化にあたり、「新技術を活用した屋外貯蔵タンクの効果的な予防保全」に関する検討結果を踏まえたガイドラインが策定されています。

このガイドラインでは、

・検査の具体的な実施方法
・適用範囲の考え方
・従来検査との使い分け

が整理されており、自治体・事業者ともに、この指針に基づいた運用が求められます。


■④ 従来検査との関係と注意点

重要な点として、新たに施工された溶接継手については、従来どおり、

・磁粉探傷試験
・浸透探傷試験

による合格確認が必要です。渦電流探傷試験は、これらを完全に置き換えるものではなく、既存制度と併用しながら予防保全を強化する位置付けとなります。

また、内部点検において渦電流探傷試験を適用することも認められています。


■⑤ コーティングタンクへの配慮

コーティングを有する屋外貯蔵タンクについては、

・水張試験・水圧試験
・有害な変形の確認
・溶接継手の脚長測定

といった検査を行う場合、原則として既存コーティングを全面剥離する必要はありません。これは、保安水準を維持しつつ、実務負担を過度に増やさないための合理的な措置といえます。


■⑥ 防災の視点で見た今回の改正の意味

危険物施設の事故は、一度発生すれば人的・環境的被害が極めて大きくなります。そのため、防災の本質は「事故を起こさない構造と運用」にあります。

今回の渦電流探傷試験の追加は、

・点検精度の向上
・早期劣化の把握
・計画的な補修判断

を可能にし、危険物施設の「壊れにくさ」を底上げする改正です。

制度を知り、正しく運用すること自体が、防災行動の一つです。危険物施設に関わるすべての関係者が、この改正の意味を理解し、日常の保安管理に活かしていくことが、事故のない社会につながります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました