防災力の本質は、装備や訓練だけで決まるものではありません。組織の多様性、働きやすさ、そして人材が定着し続ける仕組みがあってこそ、災害対応力は維持・向上します。令和7年度に実施される「女性消防吏員活躍推進モデル事業」は、その核心に迫る取り組みです。
■① なぜ今、女性消防吏員のモデル事業なのか
消防庁は平成30年度から、全国の手本となる先進事例を構築するため、女性消防吏員の活躍推進モデル事業を実施しています。背景にあるのは、人口減少社会における人材確保の難しさと、消防組織の持続可能性という現実です。
女性の採用促進や職場環境の整備は、単なる「平等」の問題ではなく、消防力そのものを維持するための戦略的施策です。
■② 採用だけで終わらせないという視点
女性消防吏員の活躍推進は、採用人数を増やせば解決する問題ではありません。
・働き続けられる環境があるか
・キャリア形成が描けるか
・組織文化として受け入れられているか
モデル事業では、こうした「定着」と「活躍」に直結する課題に正面から取り組むことが求められています。
■③ モデル事業で想定される具体的な取組
募集要綱では、次のような取組が例示されています。
・女性消防吏員の採用拡大に向けた工夫
・意識改革や職場環境の整備
・女性のリーダーシップ育成
・男性消防吏員の家事・育児参画促進
・調査研究による課題の可視化
いずれも、災害対応の質を底上げするための重要な要素です。
■④ モデル事業が防災力に直結する理由
災害現場や避難所では、多様な住民への対応が求められます。女性、高齢者、子ども、障がいのある方など、状況に応じた配慮が不可欠です。
女性消防吏員の存在は、
・被災者の安心感
・きめ細かな支援
・避難所運営の安定
といった点で、防災力を確実に高めます。
■⑤ 全国に波及させるための「モデル」という役割
この事業の最大の目的は、一部の先進事例を全国に横展開できる形で示すことです。
・他地域でも再現可能か
・一過性で終わらないか
・継続性が担保されているか
こうした視点で選定されることで、全国の消防本部が自らの組織改革に活かせる知見が蓄積されていきます。
■⑥ 委託額と規模が示す現実的アプローチ
事業1件あたりの委託額は原則20万円から200万円。大規模な施設整備ではなく、意識改革や制度設計、試行的な取組に重点を置いた現実的な設計です。
これは「今ある組織をどう進化させるか」という、実務に即した防災強化策と言えます。
■⑦ 防災組織の士気と信頼を高める効果
女性消防吏員の活躍が進むことで、
・組織内のコミュニケーション向上
・働き方の見直し
・住民からの信頼向上
といった副次的効果も生まれます。結果として、消防組織全体の士気と一体感が高まり、災害時の対応力にも好影響を与えます。
■⑧ 今日からできる最小の一歩
このモデル事業が示しているのは、「特別なこと」ではありません。
・現場の声を拾う
・課題を言語化する
・小さく試して改善する
この積み重ねこそが、壊れにくい防災組織をつくります。女性消防吏員活躍推進モデル事業は、その第一歩を後押しする制度です。

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