消防大学校では、救急隊長等を対象に、救急業務の教育指導者としての資質向上と、高度な知識・能力の修得を目的とした専科教育「救急科」を設置している。
本年度の救急科第87期では、全国から集まった48名が、学生主体で考え、実践する教育訓練に取り組んだ。
■① 救急科が果たす役割
救急科は、単なる技術研修ではなく、各地域の救急体制を牽引する幹部人材の育成を目的としている。
訓練の企画・運営、地域課題の共有、指導的立場に必要な判断力と調整力を総合的に養う点が特徴である。
全国の現場を知る隊員同士が学び合うことで、現実的で再現性の高い知見が蓄積される。
■② 多数傷病者対応訓練の狙い
多数傷病者対応訓練では、講義・シミュレーション・実動訓練を段階的に実施し、活動全体の流れを体系的に確認した。
想定は「スクールバスと普通乗用車の事故による多数傷病者事案」とし、現場指揮、部隊運用、医療連携、トリアージ対応を重点的に検証した。
■③ 医療機関・大学と連携した実践訓練
実動訓練では、杏林大学医学部付属病院のDMAT医師・看護師・調整係員、さらに救急救命学科の大学生が傷病者役として参加した。
消防・DMAT・学生の三者合同訓練により、現場に近い緊張感の中で判断と連携を求められる訓練環境が構築された。
実災害を想定した合同訓練は、机上では得られない学びをもたらす。
■④ 学生主体の振り返りが生む学習効果
訓練後には意見交換と振り返りを行い、対応の難しさや判断の分かれ目について深く議論した。
「大規模な訓練を経験できた」「学生同士で考え方を共有できた」といった声が多く、学習効果の高さがうかがえる。
このプロセスこそが、各地域へ知識と経験を持ち帰る原動力となる。
■⑤ 病院前12誘導心電図判読トレーニング
「基本手技確認Ⅰ」として、病院前12誘導心電図判読トレーニングを実施した。
医師・看護師等による講義と、レサシアン人形を用いた実践研修を通じ、救急現場で即活用できる判読力の向上を図った。
講師が傷病者役や家族役を演じるなど、臨場感ある訓練が行われた点も特徴である。
■⑥ 継続訓練が救急の質を高める
受講生からは「苦手意識が克服できた」「体系的に学ぶ重要性を実感した」との声が寄せられた。
12誘導心電図を用いた高度な救急活動は今後さらに求められる分野であり、継続的な訓練が不可欠である。
■⑦ 現場へ還元される教育の成果
救急科第87期の48名は、全員が課程を修了し、それぞれの所属へ戻っていった。
消防大学校で修得した知識・能力と、全国の仲間とのつながりは、各地域の救急体制を確実に強化していく。
人を育てることは、結果として地域の命を守る防災力そのものを高めることにつながる。

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