【元消防職員が解説】危険物火災を“知っている”指導者を育てる|防災×危険物教育

消防大学校では、危険物保安業務に関する高度な知識・技術を専門的に修得し、各地域で教育指導的役割を担う人材を育成するため、専科教育として「危険物科」を設置している。
令和7年度の危険物科は、10月30日から12月2日までの期間で実施された。


■① 危険物科の目的と位置づけ

危険物科は、単なる知識習得ではなく、危険物施設に対する規制・指導・災害対応を総合的に理解し、現場で判断できる人材を育てることを目的としている。
修了者は、各消防本部において危険物行政・保安指導・警防活動の中核を担う存在となる。


■② 座学で学ぶ「最新の危険物行政と事故の本質」

講義では、最新の危険物行政の動向や法制度に加え、材料工学・土木工学の視点から施設構造を学習した。
さらに、過去の重大事故を題材に、なぜ事故が起きたのか、どこに見落としがあったのかを多角的に分析し、机上の知識を実務に結び付ける力を養った。


■③ 国内最大級施設で学ぶ危険物施設の実際

校外研修では、国内最大級規模のエネオス株式会社根岸製油所を訪れ、危険物施設や大容量泡放射システムを見学した。
また、タツノ株式会社横浜工場では、給油取扱所設備の実機展示を視察し、設計思想や安全対策について理解を深めた。

図面だけでは分からない「現場のスケール感」を体感することは、指導者にとって極めて重要である。


■④ 実験を通じて理解する燃焼と材料の変化

燃焼理論や腐食・防食の講義では、実験を交えながら、危険物の燃焼挙動や材料の性状変化を観察した。
これにより、火災時に何が起きているのかを理論と現象の両面から理解できる構成となっている。


■⑤ 実火災体験型訓練の意義

危険物火災や漏洩事故は、施設の老朽化と相まって毎年一定数発生している。
そのため危険物科では、実火災体験型訓練を取り入れ、より実践的な教育を行っている。

この訓練は、危険物火災の特性や消火要領を体感的に理解し、安全で効果的な現場指揮や訓練指導につなげることを目的としている。


■⑥ スロップオーバー・ボイルオーバーを“見る”訓練

訓練では、スロップオーバー現象やボイルオーバー現象を模擬的に再現した燃焼を見学・体験した。
発生前の兆候、発生時の挙動を実際に目にすることで、危険物火災の恐ろしさと判断の重要性を強く認識する機会となった。

百聞は一見にしかず、という言葉を実感する訓練である。


■⑦ 現場と行政を支える“体験知”

危険物施設での火災や漏洩事故は、一般火災とは比較にならないほど消防活動の危険性が高く、周囲への影響も甚大となる。
本課程で得た知識・技術、そして体験は、今後の規制審査、保安事務、警防活動、さらには後進育成の研修において大きな力となる。

危険物を「知っている」だけでなく、「起きることを想像できる」指導者を育てることこそが、防災力の底上げにつながっていく。

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