「今年は暖冬で楽だな」
そう思っている人は多いですが、実は暖冬は 豪雨災害の“当たり年” になる傾向があります。
暖冬は単に気温が高いだけではありません。
大気・海・地面・自然環境が“豪雨を起こしやすい状態”になるため、
警戒すべきは冬ではなく、春〜夏にかけての水害 なのです。
防災士として、
暖冬と豪雨の関係を“やさしく・確実に”解説します。
■ ① 暖冬の年は“大気中の水蒸気が増える”
暖冬になる原因は大きく分けて次の2つ。
- 海水温が高い
- 大気が温められている
空気が暖まると、
より多くの水蒸気を抱え込めるようになります。
つまり暖冬とは、
大気の“水分量が多い状態”の冬。
この余分な水蒸気が、春〜夏にかけてまとまった雨雲を作り、
豪雨の材料になります。
■ ② 暖冬は“海水温が下がらない”→豪雨が発生しやすい
本来、冬の海は冷えて台風や豪雨が発達しづらい状態になります。
しかし暖冬の年は海が冷えにくく、
✔ 春から夏にかけて海水温が高い状態が続く
→ 発達した雨雲ができやすい
→ 台風も勢力を保ったまま日本接近
→ 梅雨前線が活発化
→ ゲリラ豪雨や線状降水帯が増加
という悪循環が起こります。
暖冬=災害が減るではなく、
災害の種類が冬 → 春夏に移動するだけ です。
■ ③ 暖冬の翌年は“線状降水帯”が増える傾向がある
線状降水帯とは、
猛烈な雨が同じ場所に次々と連続して襲う“危険な雨雲の列”。
暖冬の翌年は、以下の理由で発生率が上がるとされています。
- 海水温が高い
- 大気が不安定
- 湿った空気が流れ込みやすい
- 前線が活発化しやすい
つまり、暖冬は
線状降水帯が発生しやすい元年
になりやすいのです。
熊本豪雨・西日本豪雨・九州北部豪雨など、
甚大な災害の背景には“湿った空気の異常供給”があります。
■ ④ 暖冬は雪解け水が減り、春の水不足を招く
暖冬=雪が少ない
→ 春に雪解け水が流れ込まない
→ ダムの貯水量が減る
→ 梅雨入り前に水不足
この“春の水不足”を補おうと前線が活発化すると、
豪雨の勢いが強くなるケースも。
暖冬は、
渇水と豪雨の両方を招く矛盾した季節変動
でもあります。
■ ⑤ 暖冬の年に家庭が必ずやるべき豪雨対策
暖冬の年は“豪雨シーズンの前倒し”が必要です。
春の時点で次の備えを始めましょう。
● ① 家の2階への“垂直避難セット”を整える
豪雨は夜間に起こることが多いため、
避難所へ行く時間がないケースが増えています。
寝室・2階に置くべきもの
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
- 飲料水
- 非常食
- 簡易トイレ
- 眼鏡・薬・貴重品
豪雨は“2階に逃げるだけで命が助かる”災害です。
● ② 土砂災害警戒区域の再確認
暖冬の年は、
春〜夏にかけて土砂崩れが増えます。
- ハザードマップ
- 過去の土砂災害履歴
- 急斜面の有無
家の安全性を必ず確認しましょう。
● ③ 雨どい・排水溝・庭の水はけチェック
暖冬で気温が高いと草木が早く成長し、
排水溝が詰まりやすくなります。
春のうちに掃除しておくと、
ゲリラ豪雨時の浸水リスクを大きく減らせます。
● ④ 早めの避難(雨が降る前に動く)
豪雨は「雨が降ってから逃げる」では遅い時代です。
暖冬の年ほど、
避難タイミングは早めにする必要があります。
■ ⑥ 暖冬=豪雨の当たり年
という認識が命を守る
防災士として強く伝えたいのはこれです。
✔ 暖冬は“冬に楽をした分、春夏が危ない年”
✔ 豪雨のリスクが何倍にも跳ね上がる
✔ 水害・土砂災害・台風が増えるサイン
寒さは確かに楽ですが、
“気候が緩んだ年は災害が激しくなる”のが現在の日本の傾向です。
■ まとめ:暖冬こそ春夏の豪雨に備える“前兆の冬”
暖冬自体は決して悪いだけではありません。
光熱費が下がる、活動しやすいなどのメリットもあります。
しかし、防災の視点で見れば、
- 海水温が高い
- 大気の水蒸気が増える
- 雨雲が発達しやすい
- 台風が巨大化しやすい
- 線状降水帯が増える
という“危険な前兆”でもあります。
暖冬だった冬の翌年は、
豪雨対策をこれまで以上に強化してください。
備えれば確実に命は守れます。
暖冬の裏にあるサインを見逃さず、
春夏の水害に備えていきましょう。

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