【防災士が解説】避難所とスフィア基準の現実|防災×避難生活・車中泊避難

大規模災害のたびに課題として浮き彫りになるのが「避難所の生活環境」です。
阪神・淡路大震災から30年近くが経過しましたが、今なお“助かった命が失われる”災害関連死は後を絶ちません。

その背景には、避難所の環境が人の生活に適していないという根本的な問題があります。


■① 国際的指標「スフィア基準」とは何か

スフィア基準とは、災害時でも人の尊厳を守るために定められた国際的な最低生活基準です。

主な内容は次のとおりです。

・1人あたり居住スペース:3.5㎡
・トイレ:20人に1基
・入浴設備:50人に1か所

能登半島地震を受け、国の避難所指針にも反映されましたが、現実には多くの自治体で「満たすことができない」状況にあります。


■② 災害関連死が示す避難所の限界

阪神・淡路大震災では、発災1週間後に約31万人が避難。
寒さの中、体育館の床に毛布と段ボールを敷いて過ごす生活が続きました。

結果として、直接死を大きく上回る災害関連死が発生しました。

この傾向は、
・東日本大震災
・熊本地震
・能登半島地震
でも繰り返されています。

「揺れから助かったあとに亡くなる」
これは、防災の最大の失敗とも言えます。


■③ 南海トラフ地震で想定される深刻な不足

高知市では、南海トラフ地震発生から1週間後に約11万人が避難すると想定されています。

しかし、スフィア基準を適用すると、
・収容可能:約4万6千人
・不足:約6万6千人

土佐市、香南市などでも同様に大幅な不足が見込まれています。
体育館避難だけでは、明らかに限界があります。


■④ 車中泊避難という「現実的な選択肢」

この不足を補う手段として注目されているのが「車中泊避難」です。

自治体では、
・学校の運動場
・公民館
・民間駐車場
を活用した車中泊スペースの整備が進められています。

車中泊の利点は、
・プライバシーが確保できる
・ペットと一緒に避難できる
・温度や湿度を調整しやすい

といった点にあります。


■⑤ 車中泊避難のリスクと対策

一方で、車中泊には注意点もあります。

特に問題となるのが、
・エコノミークラス症候群
です。

水分を控え、狭い姿勢を続けることで血栓ができ、命に関わるケースもあります。

そのため、
・足を伸ばして横になる
・こまめに水分補給
・定期的に足を動かす
といった対策が不可欠です。

国も自治体に対し、車中泊避難者への支援体制整備を求めています。


■⑥ 「体育館だけでは守れない命」がある

被災地支援に携わってきた専門家からは、
「体育館は人が暮らす場所ではない」
という指摘が繰り返されています。

冬は寒く、夏は暑い。
衛生管理も困難です。

避難所運営を行政任せにすると、
・支援が遅れる
・不満が蓄積する
という問題も生じます。

住民主体での運営と、多様な避難形態の併用が現実解です。


■⑦ 今日できる最小行動

・「避難所=体育館」だけと思い込まない
・車中泊避難のメリットとリスクを知る
・水分補給と運動の重要性を理解する

災害後に必要なのは、
「助かった命を守り切る視点」です。

避難生活は、命を守る行為の“続き”であることを忘れてはいけません。

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