病院内での災害対応において、MRI室は極めて特殊で危険性の高いエリアです。特にMRIが稼働中の場合、通常の救助・消火・医療対応がそのまま通用しないことを理解しておく必要があります。
■① MRI室が「特別危険区域」とされる理由
MRI(磁気共鳴画像装置)は、稼働中に非常に強力な磁場を発生させています。
・電源OFFでも磁場は消えない
・金属が強制的に引き寄せられる
・磁場の影響は目に見えない
このため、MRI室は「常時危険区域」として扱う必要があります。
■② 稼働中MRI室で起こり得る事故
MRI室では、以下のような重大事故が実際に発生しています。
・酸素ボンベの吸着による致命的外傷
・点滴スタンド・担架の飛来
・医療機器の破損・停止
・救助者自身の負傷
特に救急搬送や院内急変時に、十分な認識がないまま立ち入ることが、二次災害につながります。
■③ 消防・救急活動における最大の注意点
消防・救急隊がMRI室事案に対応する際の最重要原則は以下です。
・MRI室へは無断で立ち入らない
・金属装備のまま進入しない
・病院職員の指示を最優先する
通常の救助資機材(斧・工具・ストレッチャー等)は、すべて凶器になり得ます。
■④ 「クエンチ」の判断は現場ではできない
MRI磁場を緊急停止させる「クエンチ」は、最終手段です。
・大量の液体ヘリウム放出
・室内酸欠の危険
・装置への甚大な損傷
クエンチの判断・操作は、原則として病院側(放射線技師等)が行います。消防・救急が独断で指示・実施することは極めて危険です。
■⑤ 医療スタッフとの連携が生死を分ける
MRI室対応では、医療スタッフとの連携がすべてです。
・MRI稼働状態の確認
・磁場範囲(5ガウスライン)の把握
・安全に使用できる器材の確認
「誰が安全管理責任者か」を即座に確認することが、初動の鍵になります。
■⑥ 病院側に求められる事前防災対策
病院においては、以下の備えが不可欠です。
・MRI室の明確な表示
・立入制限と警告サイン
・災害時対応マニュアル整備
・消防・救急との事前共有
特に夜間や休日は、専門スタッフ不在となるケースがあり、リスクが高まります。
■⑦ 現場でよくある誤解と危険行動
実際の現場では、次のような誤解が事故につながります。
・「止まっているから大丈夫」
・「金属は小さいから問題ない」
・「緊急だから仕方ない」
MRI室では、緊急性よりも安全性が優先されます。
■⑧ まとめ|MRI室は“見えない災害現場”
MRI室は、火も煙もなく、音も静かです。しかし、
・強力な磁場
・不可逆な事故
・即死リスク
を内包した、極めて危険な災害現場でもあります。
病院職員・消防・救急が共通認識を持ち、「入らない勇気」「止めない判断」を含めた冷静な対応が、命を守る防災につながります。

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