2024年7月、福岡市消防学校で実施された水難救助訓練において、初任学生が死亡する重大事故が発生しました。
本事案は、消防訓練そのものの安全性が問われる出来事であり、全国の消防・防災関係者にとって重い教訓を残しています。
■① 事故の概要|水難救助訓練中に発生した死亡事故
2024年7月9日、福岡市西区の市民プールで実施された市消防学校の水難救助訓練において、初任学生の岡本大河さん(当時26歳)が溺水しました。
・訓練内容:立ち泳ぎを中心とした水難救助訓練
・参加者:学生52人、教官18人
・プール水深:約3メートル
岡本さんは意識不明となり、治療が続けられましたが、7月17日に低酸素脳症により死亡が確認されました。
■② 訓練当時の状況と問題点
本訓練は、体力消耗が極めて激しい立ち泳ぎを、一斉に多数の学生が実施する形式でした。
問題点として指摘されているのは、
・深水での同時訓練
・個々の泳力差への配慮不足
・監視体制の不十分さ
です。
実際、事故当時には他の学生からも体調不良を訴える事例が確認されています。
■③ 警察の対応|業務上過失致死で書類送検
福岡県警は2024年、
・当時の消防学校長
・教官
・外部講師
計3人を業務上過失致死容疑で書類送検しました。
3人はいずれも、
・訓練計画の決裁権を有していた
・安全確保の具体的な計画を作成しないまま訓練を実施した
疑いが持たれています。
■④ 繰り返される水難救助訓練事故
消防関係の水難救助訓練では、過去にも死亡事故が発生しています。
・2020年:山口県消防学校
・2023年:新潟県柏崎市の海水浴場
いずれも20代の消防士が訓練中に死亡しています。
これを受け、総務省消防庁はその都度、マニュアル再点検の通知を発出してきましたが、現場への浸透や実効性には課題が残されていました。
■⑤ 元消防職員の視点から見た本質的課題
私自身、消防職員として訓練に携わってきた経験から断言できるのは、
訓練事故は「想定不足」と「監視不足」の重なりで起きるという点です。
特に水難訓練では、
・事前の泳力スクリーニング
・体力差を考慮した班分け
・監視専従者の配置
・中止判断をためらわない基準
これらが不可欠です。
■⑥ 消防訓練に求められるリスクアセスメント
消防訓練は「厳しさ」よりも、
安全を確保した上での再現性が最優先されるべきです。
・事故が起きたら訓練は成立しない
・訓練で命を落とすことは本末転倒
という原点を、改めて確認する必要があります。
■⑦ まとめ|命を守るための訓練で命を失わないために
福岡市消防学校の事故は、
・訓練計画
・安全管理体制
・リスク評価
・組織文化
すべてを見直す必要性を突き付けました。
防災・消防の訓練は、
「実戦的である前に、安全でなければならない」。
この教訓を、全国の防災現場が共有し、二度と同様の事故を繰り返さないことが強く求められています。

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