【元消防職員が解説】防災×EV車両火災|アクアサイクロンが変えるリチウムイオン電池火災対応

EV(電気自動車)の普及に伴い、車両火災の様相は大きく変化しています。特に課題となっているのが、車体下部に搭載されたリチウムイオン電池(LIB)の熱暴走と再燃リスクです。こうした新たな脅威に対応するため、モリタが開発したのが車両火災用ノズル「アクアサイクロン」です。


■① EV火災が従来火災と決定的に違う理由

EV火災では、外観上の火炎が収まっても、車体下部のLIB内部で高温状態が長時間続き、再燃する危険があります。大量放水による消火は可能ですが、水量・時間・人員すべてに大きな負担がかかる点が現場課題でした。


■② アクアサイクロンとは何か

アクアサイクロンは、EV・HV・PHV・ガソリン車を含む車両火災に対応した専用ノズルで、特に車体下部からLIBを効率的に冷却することを目的とした機材です。消火というより「冷却」に主眼を置いた設計思想が特徴です。


■③ 車体下部に特化した薄型構造

ノズルヘッドの全高は約90mmと非常に薄く、車体下に差し込める形状となっています。これにより、横転車両や炎上中の車両に不用意に近づかず、下方から安全に冷却放水が可能です。


■④ 少水量で広範囲を冷却できる仕組み

放水量は約50L/min、圧力は約0.5MPaと比較的少流量ながら、回転する先端ノズルにより約2m×2mの範囲を効率よく冷却できます。これは長時間冷却が求められるEV火災において、水資源の節約という大きな利点になります。


■⑤ 置き放水による安全性と省力化

一度設置すれば「置き放水」が可能なため、隊員が高温・再燃リスクの高い車両に張り付く必要がありません。安全距離を確保しながら、他の隊員を交通規制や延焼防止など別任務に振り向けられる点は、現場運用上きわめて大きなメリットです。


■⑥ 隊員を守る遮へい効果

側面放水ノズルにより、車体下部から噴き上がる火炎や熱気を抑制する効果も意図されています。これは単なる消火性能だけでなく、「隊員防護」を含めた設計思想と言えます。


■⑦ 他装備との組み合わせを前提とした運用

アクアサイクロンは単独完結型ではなく、上方からの通常放水、消火ブランケット、泡消火(CAFS車など)と組み合わせて使用することが想定されています。LIB下部冷却というピンポイント役割を担うことで、全体の消火戦術を最適化します。


■⑧ EV時代の車両火災対応の象徴

EV火災は「燃えたら消す」から「冷やし続ける」対応へと変わりました。アクアサイクロンは、その象徴とも言える機材です。今後、車両火災対応は装備・戦術・知識のアップデートが不可欠となり、このような専用機材の重要性はさらに高まっていくでしょう。


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