大規模地震や台風などの災害で停電が発生したとき、最も深刻な影響を受けるのが「医療用電源を必要とする人」です。
近年、人工呼吸器を使用する難病患者などの命を支える新たな仕組みとして、「電源ドナー」という取り組みが注目されています。
これは、防災の視点から見ても極めて実践的で、現実的な“命をつなぐ仕組み”です。
■① 災害時に最も深刻なのは「電源を止められない命」
停電は、照明や家電が使えなくなるだけの問題ではありません。
人工呼吸器、吸引器、在宅医療機器を使用している人にとって、電源喪失は即、生命の危機につながります。
近年は地震だけでなく、
・台風
・線状降水帯
・大雪
などでも、広範囲かつ長期の停電が発生しています。
「数時間なら大丈夫」という前提は、すでに通用しない時代に入っています。
■② 「電源ドナー」とは何か
電源ドナーとは、
物流企業や中古車販売店などが保有する車両やフォークリフトのバッテリーを、災害時に医療機器の給電に活用する仕組みです。
自動車や電動フォークリフトのバッテリーは容量が大きく、
インバーターを介することで、家庭用電源として安定した給電が可能です。
この仕組みを社会インフラとして整えようとするのが「電源ドナー協会」です。
■③ なぜ「車両バッテリー」が現実的なのか
災害時の電源対策として、各家庭では
・発電機
・ポータブル電源
を備えているケースもあります。
しかし、
・使用可能時間に限界がある
・燃料や充電が尽きる
・長期停電に耐えられない
という課題があります。
一方、トラックやフォークリフトのバッテリーは、
・容量が大きい
・業務用で耐久性が高い
・災害時でも比較的稼働可能
という特徴があり、「点」ではなく「支え続ける電源」として機能します。
■④ 電源ドナーの具体的な仕組み
電源ドナーの取り組みでは、主に次のような仕組みが整えられています。
・事前登録した倉庫や中古車販売店を「給電スポット」として地図上で可視化
・物流企業がトラックを患者宅に派遣し、その場で人工呼吸器に給電
・フォークリフトや中古バッテリーを再利用した蓄電池の有償レンタル
これは、行政の支援を待つのではなく、
民間の力で“今すぐ動ける電源”を確保する発想です。
■⑤ 当事者が感じている切実な不安
在宅で人工呼吸器を使用する患者や家族にとって、
「停電=即、行動判断を迫られる状況」です。
・発電機はいつまで持つのか
・避難入院先まで移動できるのか
・道路が寸断されたらどうするのか
こうした不安を、被災地支援の現場でも何度も目にしてきました。
電源ドナーは、「選択肢が一つ増える」だけで、心理的負担を大きく下げます。
■⑥ 防災の本質は「仕組みを平時から用意すること」
防災は、災害が起きてから考えるものではありません。
特に医療電源の問題は、事前に仕組みがなければ対応できません。
・誰が
・どこで
・どの電源を
・どうやって届けるのか
これを平時から設計しておくことが、防災の本質です。
電源ドナーは、その考え方を社会に実装しようとする取り組みです。
■⑦ まとめ|「命をつなぐ電源」を社会で支える時代へ
災害時、電気はインフラであると同時に「命綱」です。
電源ドナーは、企業の資源を社会の命に還元する、新しい防災の形と言えます。
・行政任せにしない
・地域と企業がつながる
・平時から動ける仕組みを持つ
これからの防災には、こうした発想が欠かせません。
「電源があるかどうか」で、生死が分かれない社会へ。
電源ドナーは、その一歩となる取り組みです。

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