日本の避難訓練は、30年以上ほとんど形を変えずに続いてきました。
その在り方に科学的な検証を加え、「実災害で命を守れる訓練」へ転換する研究成果が発表されました。
それが『避難訓練2.0(Risk to Action)』です。
■① 日本の避難訓練が抱えていた現実
防災先進県とされる静岡県で行われた調査では、
54%の保育者が「想定にさえ足りていない備えだった」と回答しました。
さらに、
- 想定される震度や揺れの継続時間を「知らなかった」:60%
- 想像と現実が「違っていた」:25%
という結果が示されています。
■② 問題は「現場の努力不足」ではなかった
避難訓練が変わらなかった原因は、
現場の意識や努力ではなく、構造的な問題にありました。
- 災害リスクと訓練内容を比較する視点がない
- 想定とズレた訓練でも「正解」として固定化
- 教育現場で災害想定・リスク評価を学ぶ機会が乏しい
この構造が、訓練の停滞を生んでいました。
■③ 「想定を知る」ことで初めて気づく不足
研究で最も重要だったのは、
正しい被害想定を知った瞬間に、現場が自ら不足を認識した点です。
想定と比較できなければ、
訓練が足りていないこと自体に気づけません。
■④ 解決策:避難訓練2.0(Risk to Action)
『避難訓練2.0』は、行動を教える訓練ではありません。
- 被害想定(リスク)を起点に
- そこから逆算して
- 「生き残る行動」を自ら選ぶ
という、安全の原理原則に立ち返った考え方です。
■⑤ 従来訓練との決定的な違い
従来の訓練
- 正解の姿勢・正解の行動を教える
- 一斉・同時・指示待ち
避難訓練2.0
- 状況に応じて行動を選ぶ
- 見て、判断して、動く
- 想定と照らして妥当性を検証する
■⑥ 身体で学ぶ「Risk to Action」
実証実験では、以下のツールが活用されました。
- 減災紙芝居「がたぐら」
- 地震体験マット「YURETA」
視覚や感覚を通じて、
揺れの強さ・危険の見え方を身体で理解する取り組みです。
■⑦ 実証結果が示した変化
調査・実証の結果は明確でした。
- 避難訓練の改善が「必要」:99%
- 専門的・継続的支援を「受けたい」:97%
重要なのは、
「改善できたか」ではなく
改善が必要だと現場が自覚できたことです。
■⑧ 防災教育は「判断力」を育てる時代へ
保育施設では、
決まったポーズを教える指導から、
周囲を見て回避行動を選ぶ指導へ転換が始まりました。
小学校・中学校では、
被害想定を踏まえた判断力育成が重視されています。
防災教育は、
「言われた通り動く力」ではなく、
状況に応じて自ら判断する力を育てる段階に入っています。
避難訓練を「儀式」で終わらせない。
想定と比較し、評価し、次につなげる。
それが、命を守るための
避難訓練2.0です。

コメント