【防災士が解説】防災×音楽|震災15年、歌声がつなぐ記憶と次代への備え

東日本大震災と原発事故から間もなく15年を迎える中、福島県で新たな動きが始まっています。県合唱連盟は、15歳から30歳までの若者37人で構成される「県青少年選抜合唱団」を発足させました。音楽を通じて人を育て、記憶を未来へつなぐ取り組みは、防災の視点から見ても大きな意味を持っています。


■① 震災の記憶を「人」で継ぐ取り組み

県青少年選抜合唱団は、本県の若い世代の音楽性向上と、将来の合唱界を担うリーダー育成を目的に結成されました。
連盟加盟団体から公募し、オーディションで選ばれた団員たちは、2026年2月から計14回の練習や強化合宿に臨みます。

来年2月14日には郡山市で創立80周年記念式典、3月27日には福島市で記念コンサートが予定されており、1年間の成長の成果が披露されます。


■② 防災と音楽は無関係ではない

防災というと、備蓄や訓練、ハード対策を思い浮かべがちです。しかし、災害からの回復において重要なのは「心の復興」です。
歌や音楽は、人の感情を整え、悲しみや不安を言葉以上に共有できる力を持っています。

震災後、多くの被災地で音楽が人の心を支えてきたことは、現場でも数多く確認されています。


■③ 世界水準の指導で育つ次代の担い手

今回の合唱団では、ドイツの指揮者・声楽家ディータ・ワーグナー氏を講師に迎え、ソプラノからバスまで各パートを専門家が指導します。
過去に欧州公演を経験した青少年選抜合唱団OBも参加しており、技術だけでなく、歌う喜びや経験そのものが次世代へ受け継がれます。

これは単なる音楽教育ではなく、「経験の継承」という防災にも通じる価値を持っています。


■④ 震災を風化させないための新しい歌

県合唱連盟は、創立80周年記念として新たな合唱曲を委嘱しました。
作詞は福島市出身の詩人・和合亮一さん、作曲は信長貴富さん。これまで震災をテーマにした2作品に続き、今回は「ふくしまの未来への力」を感じさせる詞が紡がれています。

この3作品は組曲として構成され、記念式典で県青少年選抜合唱団が初演します。


■⑤ 防災士の視点で見る「歌の力」

防災とは、命を守るだけでなく、

  • 記憶を継ぐ
  • 教訓を語り続ける
  • 心が折れない社会をつくる

ことでもあります。

若い世代が震災と向き合い、その思いを歌として表現することは、非常に強い防災教育の形です。体験できなかった世代が、自分の言葉と声で震災を語れるようになることは、将来の減災につながります。


■⑥ ハーモニーが地域の「耐災害力」を高める

合唱は、一人では成り立ちません。互いの声を聴き、支え合い、同じ方向を向いて初めて美しいハーモニーが生まれます。
この姿そのものが、災害に強い地域社会の在り方と重なります。

歌声が県民の心を癒やし、文化を育て、そして震災の記憶を未来へ運ぶ。
防災×音楽は、静かですが確かな「備え」の一つです。

震災15年という節目に、次代を担う若者たちの歌声が、福島の未来を力強く支えていくことを期待したいと思います。

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