【元消防職員・防災士が解説】防災×林野火災|白いシラス消火剤の正体と本当の使いどころ

林野火災の映像で、
山肌に白く散布されている物質を見たことがある人も多いと思います。

「あれは何?」「灰?」「土?」
実はあれは、延焼防止剤(ロングターム・リターダント)と呼ばれる
林野火災専用の消火資機材です。

被災地派遣や現地対応の経験を踏まえ、
シラス消火剤の役割と、日本の林野火災での現実的な使われ方を整理します。


■① 林野火災で使われる「白いシラス剤」とは

林野火災で使われる白色の薬剤は、
主にリン酸塩類を主成分とした延焼防止剤です。

・粉末状
・水と混合して使用
・乾燥後も地表に残留

見た目が白く、シラス土壌に似ているため
現場では「シラス剤」と呼ばれることもあります。


■② 水とは違う|冷却+燃焼抑制の二重効果

この薬剤の最大の特徴は、

・水による冷却効果
・リン酸塩による燃焼抑制効果

二重作用です。

水は蒸発すると効果がなくなりますが、
シラス剤は水分が飛んだ後も地表に残り、

・燃えにくい層を作る
・再燃を抑える

という性質を持ちます。


■③ 使い方の基本は「事前に撒く」

林野火災でのシラス剤は、
直接火を消すためよりも、

・延焼予測線
・尾根や谷筋
・集落手前

などに事前散布(間接消火)として使われます。

被災地派遣で実感したのは、
「火が来てからでは遅い」という現実でした。


■④ 空中消火と地上消火の役割分担

日本の林野火災消火は、
地上+空中の連携が基本です。

・地上:ポンプ車・ホースで民家防御
・空中:ヘリでシラス剤を広域散布

特に急峻地形では、
地上隊が入れない場所への空中散布が重要になります。


■⑤ 日本では「水が主役」、シラス剤は切り札

海外ではリターダント主体の戦術もありますが、
日本の実情は少し異なります。

・水源が比較的近い
・頻繁な再放水が可能
・人家優先の防御が中心

そのため、

水主体+必要に応じてシラス剤投入

という使い方が基本です。

広域延焼、残火処理、再燃防止の局面で
シラス剤が力を発揮します。


■⑥ 火を消すだけでは終わらない現場判断

林野火災では、

・迎え火(バックファイア)
・延焼阻止線の構築

といった火を制御する戦術も使われます。

この際、
迎え火後の残火処理にシラス剤を併用することで、
再燃リスクを大きく下げられます。

現場では「最後の一手」として扱われることが多い薬剤です。


■⑦ 被災地で感じた「白い線」の意味

被災地派遣で見た白い帯状の散布跡は、
「ここから先は守る」という意思表示そのものでした。

シラス剤は万能ではありませんが、
時間を稼ぎ、人命と集落を守るための資材です。

派手さはありませんが、
現場では非常に頼りにされる存在です。


■まとめ

林野火災で使われる白いシラス消火剤は、

・リン酸塩系の延焼防止剤
・水と併用する補助的資材
・事前散布で効果を発揮

という位置づけです。

日本の林野火災消火の王道は、
「水主体+シラス剤の戦略的投入」

急峻な地形と人家近接という条件下では、
いかに早く延焼を止めるかがすべて。

白い線の向こう側に、
人の生活があることを忘れないための技術です。

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