災害対応の現場で、女性消防士の存在は年々重要性を増しています。
一方で、妊娠・出産という人生の節目において、消防という職務が女性の身体に大きな負担をかける現実もあります。
このときに関わってくるのが「母体保護法」です。
被災地派遣やLOとして現場を見てきた立場から言えば、
女性消防士をどう守るかは、そのまま防災力をどう維持するかの問題でもあります。
■① 母体保護法とは何か
母体保護法は、妊娠・出産に伴い、
女性の身体と健康を守ることを目的とした法律です。
主に、
・妊娠中の健康保護
・母体への過度な負担の回避
・安全な出産環境の確保
を前提とした考え方で、医療だけでなく、就労環境にも強く関係します。
■② 消防という職務と母体リスク
消防の仕事は、
・重量物の扱い
・高温・有毒環境
・夜間・長時間活動
・強い心理的ストレス
といった、母体に大きな負荷がかかる要素を含みます。
元消防職員として現場にいた経験からも、
「通常業務の延長線上」に見える活動が、
妊娠中の身体には重大なリスクになる場面を何度も見てきました。
■③ 法律と現場のギャップ
母体保護法の考え方は明確でも、
実際の現場では次のような葛藤が生じます。
・人手不足で配置転換が難しい
・本人が「迷惑をかけたくない」と無理をする
・周囲がどう配慮すべきか分からない
被災地派遣やLO業務で自治体調整に関わった際も、
制度はあっても「使い方が共有されていない」ケースが多くありました。
■④ 妊娠中の配慮は「特別扱い」ではない
母体保護は、
個人の事情ではなく、組織としてのリスク管理です。
もし妊娠中の女性消防士が無理をして体調を崩せば、
・本人の健康被害
・周囲の精神的負担
・職場全体の士気低下
といった影響が連鎖します。
これは防災力の低下そのものです。
■⑤ 災害対応現場で見えた現実
大規模災害の現場では、
「誰が妊娠しているか」「どこまで負荷をかけていいか」
が曖昧なまま動かざるを得ない状況が生まれます。
LOとして現場調整を行った際、
事前に配慮ルールが共有されていた組織ほど、
混乱が少なく、現場対応も安定していました。
■⑥ 女性消防士を守ることは、防災を守ること
女性消防士は、
・子どもや高齢者対応
・避難所での心理的ケア
・地域との橋渡し
といった分野で、欠かせない役割を担っています。
母体保護法の考え方を現場に落とし込むことは、
単に女性を守るだけでなく、
災害対応の質を維持するための戦略でもあります。
■⑦ 行政側が言いにくい本音
「前例がない」「人が足りない」
こうした理由で、母体配慮が後回しになることがあります。
しかし、被災地派遣や調整役を経験した立場から言えば、
無理をさせた結果、後から大きな調整コストを払うケースの方が圧倒的に多いのが現実です。
■⑧ 今後の防災に必要な視点
・妊娠が分かった時点での業務整理
・本人が申し出やすい職場文化
・母体保護を前提とした配置・訓練
これらは「余裕がある組織」だけの話ではありません。
持続可能な防災体制を作るための必須条件です。
■まとめ|母体を守る組織は、防災力が壊れにくい
結論として、
母体保護法の視点を消防組織に正しく組み込むことは、命を守る職場づくりそのものです。
女性消防士が安心して働き続けられる環境は、
結果として、地域の命を守り続ける力になります。
元消防職員・防災士として、
「人を守れない組織は、災害でも人を守れない」
この現実を、現場で何度も見てきました。

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