消防士の仕事は、人の命を守る誇りある職業です。
一方で、被災地派遣や長年の現場活動を通じて実感するのは、消防士が「職業がん」という見えないリスクと常に隣り合わせにいるという現実です。
これは恐怖を煽る話ではありません。
正しく知り、行動すれば、防げるリスクでもあります。
■① 職業がんとは何か
職業がんとは、仕事中に繰り返し曝露される有害物質が原因となり、発症リスクが高まるがんのことです。
消防士の場合、主な原因は以下です。
- 火災現場で発生する煤(すす)
- 有毒ガス(ベンゼン、ホルムアルデヒド等)
- 防火服に残留する化学物質
これらは短時間でも体内に取り込まれ、長年の蓄積で影響が表面化します。
■② 消防士に多いとされるがんの種類
国内外の研究や報告で、消防士に多いとされるがんには以下があります。
- 肺がん
- 消化器系がん(大腸・胃)
- 腎臓がん
- 膀胱がん
- 血液がん(白血病など)
特に、煤に含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)は、複数のがんとの関連が指摘されています。
■③ 現場で起きやすい「見落とし」
現場では、次のような判断が重なりがちです。
- 防火服を着ているから安全
- 煤は汚れなので問題ない
- 忙しくて洗浄は後回し
被災地派遣や連続出動の場面では、「仕方ない」が積み重なりやすいのが実情です。
しかし、危険は「一回の大きな曝露」ではなく、
「小さな曝露の積み重ね」で生まれます。
■④ 職業がんを防ぐために重要な3つの行動
① 出動後の即時除染を習慣化する
- 防火服は必ず洗浄
- 顔・首・手を優先的に洗う
- ウェットワイプでもよいので初期除染
「すぐ落とす」ことが最も効果的です。
② 防火服を生活空間に持ち込まない
- 車内や休憩室に放置しない
- 自宅へ持ち帰らない
- 家族への二次曝露を防ぐ
これは自分だけでなく、家族を守る行動でもあります。
③ 健康管理を「自己責任」にしない
- 定期健診を軽視しない
- 異変を我慢しない
- 組織として対策を共有する
職業がん対策は、個人努力だけでは限界があります。
■⑤ 現場経験から感じる「本当に大切な視点」
現場で多くの消防士を見てきて思うのは、
「真面目な人ほど無理をする」ということです。
使命感の強さが、
自分の体のサインを後回しにさせてしまう。
防災とは、災害に備えることだけではありません。
自分が長く現場に立ち続けられる体を守ることも、防災です。
■まとめ|職業がん対策は「弱さ」ではない
- 職業がんは現実的なリスク
- 知って行動すれば減らせる
- 除染・洗浄・生活導線が鍵
元消防職員・防災士として伝えたいのは一つです。
自分の健康を守ることは、現場から逃げることではありません。 長く、仲間と、現場に立ち続けるための戦略です。
それもまた、消防士としての大切な責務です。

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