「救急車が有料になるかもしれない」
この話題が出るたびに、
「命に値段をつけるのか」という声が上がります。
しかし、世界に目を向けると、
救急車が有料の国はむしろ多数派です。
被災地派遣や救急現場を経験してきた立場から見ると、
この議論は“日本だけの特殊な問題”ではありません。
■① 世界では救急車は有料が当たり前
まず前提として知っておきたい事実があります。
主な国の救急車事情
- アメリカ:原則有料(数万円〜10万円超)
- イギリス:原則無料(NHS)※悪用には罰則
- フランス:原則有料(保険で補填されることが多い)
- ドイツ:原則有料(医療保険でカバー)
- オーストラリア:州によって有料・無料が異なる
👉 日本の「完全無料・全国一律」は、
国際的にはかなり例外的な制度です。
■② アメリカ|高額でも救急の優先順位は明確
アメリカでは救急車の料金が非常に高額です。
・搬送のみで5万円前後
・処置を伴うと10万円以上
そのため、
本当に命の危険がある場合しか呼ばない
という文化が根付いています。
一方で、
- 心筋梗塞
- 重症外傷
- 意識障害
こうしたケースでは、
ためらいなく救急車が使われます。
「有料=呼べない」ではなく、
「有料=使いどころを考える」という判断軸です。
■③ ヨーロッパ|保険前提で“乱用を防ぐ”
ドイツやフランスでは、
救急車は有料ですが、多くは医療保険で補填されます。
ただし、
- 軽症
- 緊急性が低い
- 医師が不要と判断
この場合は、
自己負担が発生する仕組みです。
結果として、
- 不要な救急要請が減少
- 重症患者への対応速度が向上
「無料か有料か」ではなく、
適正利用を促す設計になっています。
■④ イギリス|無料でも“使い方”が厳しい
イギリスは日本と同じく原則無料です。
しかし、
- 不適切利用
- 虚偽通報
- 繰り返しの軽症利用
これらには
罰金や利用制限が科される場合があります。
無料でも、
「何でもOK」ではない
という明確な線引きがあります。
■⑤ 日本の現状はどうか
日本では、
- 高齢化
- 独居世帯増加
- 不安からの119通報
により、救急出動が年々増えています。
現場では実際に、
「本来は相談で済む内容」
「歩いて病院に行ける状態」
の出動が少なくありません。
被災地派遣でも痛感しましたが、
資源が逼迫したとき、最も困るのは重症者です。
■⑥ 日本が学ぶべき“外国の共通点”
外国の事例に共通しているのは、ここです。
・救急車は無限ではない
・優先順位を守る仕組みがある
・相談窓口が発達している
・有料化は「抑止」ではなく「整理」
つまり、
有料化=冷たい制度ではない
ということです。
■⑦ 有料化議論の本当のゴール
日本で議論されている救急車有料化も、
目的は明確です。
・救急車を減らすためではない
・弱者を切り捨てるためでもない
・本当に助けるべき命を守るため
防災の視点では、
これは医療資源を守る備えでもあります。
■まとめ|救急車有料化は「防災の話」
救急車有料化は、
お金の話ではなく、命の優先順位の話です。
外国の事例が示しているのは、
- 使えなくする制度ではなく
- 迷わせない判断軸をつくること
救急車は、
「不安を解消するため」ではなく
「命を救うため」に走っています。
その原点を守るために、
この議論は避けて通れません。
防災とは、
災害だけでなく、
日常の医療判断を整えることでもあるのです。

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