「救急車が有料になるらしい」
そんな話題を聞くと、不安や反発を感じる人も多いと思います。
しかし、元消防職員として現場に立ち、
被災地派遣(LO)でも医療・救急体制を見てきた立場から言うと、
救急車有料化は“命を軽視する制度”ではありません。
むしろ多くの国では、
救急医療を守るための仕組みとして導入されています。
■① 日本の救急車は「完全無料」という特殊な制度
まず前提として、日本の救急制度は世界的に見ても特殊です。
日本の特徴
- 救急車は原則無料
- 119番で誰でも呼べる
- 軽症でも出動するケースが多い
この制度は素晴らしい反面、
出動件数の急増という問題を抱えています。
実際の現場では、
- 発熱
- 軽い腹痛
- タクシー代わり
といった理由での要請も少なくありません。
■② 海外では救急車は有料が当たり前
多くの国では、救急車は「医療サービスの一部」として扱われています。
アメリカ
- 救急車は原則有料
- 数万円〜十数万円になることも
- 医療保険の対象だが自己負担あり
👉 そのため、
本当に必要なときしか呼ばない文化が定着しています。
イギリス
- 救急車自体は原則無料
- ただし「緊急度の厳格な選別」がある
- 緊急性が低い場合は出動しないことも
👉 無料でも、
出動を制限する別の仕組みがあるのです。
フランス・ドイツ
- 救急車は有料(保険適用あり)
- 民間救急との役割分担が明確
- 緊急度に応じて搬送手段を選択
👉 公的救急を「資源」として扱っています。
■③ なぜ有料化が検討されるのか(現場目線)
消防現場で強く感じたのは、これです。
「本当に重症な人に、救急車が間に合わないかもしれない」
救急車は無限ではありません。
- 出動中は次の要請に行けない
- 救急隊員も疲弊する
- 病院も逼迫する
有料化の議論は、
👉 命の優先順位を守るための議論 なのです。
■④ 有料化=命が切り捨てられる、ではない
ここが誤解されやすい点です。
海外でも、
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 大事故
- 意識障害
など、命に関わるケースでは躊躇なく救急車が使われます。
重要なのは、
- 軽症は別の手段へ
- 重症は確実に救う
という 線引き です。
■⑤ 被災地で見た「救急の限界」
被災地派遣の現場では、
- 救急車が足りない
- 医療機関が機能しない
- 搬送の優先順位を決める
という現実に直面します。
そのとき問われるのは、
「誰を、今、救うか」 という判断です。
平時から救急の使い方を整理しておくことは、
災害時の生存率にも直結します。
■⑥ 日本で考えるべき現実的な選択肢
日本でいきなり全面有料化は現実的ではありません。
考えられるのは、
- 軽症時の定額負担
- 不適切利用への料金設定
- 民間救急・相談窓口の充実
- #7119などの活用強化
👉 「使わせない」のではなく、「使い分ける」制度
■⑦ 防災の視点で見る救急車有料化
防災とは、
- 災害時の話だけでなく
- 日常の医療・救急体制を守ること
救急車をどう使うかは、
社会全体の命を守る行動でもあります。
■まとめ|救急車は「守るべき命の資源」
元消防職員・防災士として伝えたいのは、この一点です。
- 救急車は無限ではない
- 本当に必要な人に確実に届ける必要がある
- 有料化は「命を選別する話」ではない
救急車を守ることは、命を守ること。
海外の事例を知ることは、
日本の救急医療の未来を考える第一歩です。
防災とは、
「いざという時のために、平時から考えること」。
救急車の使い方も、
その大切な一部です。

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