地震時の身を守る行動として広く知られる「ダンゴムシのポーズ」。多くの学校や保育現場で長年指導されてきましたが、近年ではその妥当性に疑問の声が増えています。被災地派遣や消防・防災の現場を経験してきた立場から、なぜ今「見直し」が求められているのかを整理します。
■① ダンゴムシのポーズとは何か
ダンゴムシのポーズとは、頭を両腕で抱え込み、体を丸めて低くする姿勢です。机がない場所でも頭部を守れることから、主に子ども向け防災教育として普及してきました。
■② 視界が完全に失われるという問題
この姿勢では視線が床に向き、周囲の状況が把握できません。
落下物の位置、出口の方向、周囲の人の動きが分からなくなります。
被災地では「揺れの最中に周囲を見ていた人ほど、次の行動が早かった」という事例が繰り返し確認されています。視界を失うことは、判断力の低下に直結します。
■③ 揺れが収まった後、動き出しが遅れる
ダンゴムシの姿勢は防御に特化しています。
立ち上がりにくく、逃げる判断に時間がかかり、余震や火災、将棋倒しに対応しづらくなります。
現場では「守れたが、その後に動けなかった」ことが被害拡大につながるケースも見てきました。
■④ 「その場に留まる」誤解を生みやすい
本来の地震対応は、
守る → 見る → 判断する → 動く
という連続した行動です。
しかしダンゴムシのポーズは「とにかく丸まっていれば安全」という誤解を与えやすく、出口が近くても動かない、より安全な場所へ移れない行動につながることがあります。
■⑤ 実際の被災現場との乖離
被災地派遣やLOとして現場に入った際、助かった人の多くは、
動ける姿勢を取り、視線を上げて周囲を確認し、揺れの強弱で行動を切り替えていました。
完全に丸まったままだった人は、判断が一拍遅れる傾向がありました。これは元消防職員として多くの現場で共通して感じた点です。
■⑥ 子どもに「思考停止」を教えてしまう危険
防災教育で最も避けたいのは、「考えずに同じ動きをすること」です。
ダンゴムシのポーズ一本化は、状況判断力を育てにくく、場所ごとの最適行動を考えさせないという教育上の課題が指摘されています。
■⑦ 代替として注目される「カエルのポーズ」
近年推奨が増えているのがカエルのポーズです。
しゃがむ、頭を守る、視線は前、すぐ動ける。
守りながら判断できる姿勢であり、現場感覚とも一致します。
■⑧ 防災の本質は「形」ではない
防災は決まった形を覚えることではありません。
今どこにいるか、何が危険か、どう動けるかを考える力が重要です。
防災士・元消防職員として、形よりも判断力を育てる教育が命を守ると感じています。
■まとめ
ダンゴムシのポーズは完全に間違いではありません。
しかし「唯一の正解」として教えるのは危険です。
視界と行動力を残す姿勢こそが、次の命を守ります。

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