災害時、人は「分かっていたはずの行動」が取れなくなることがあります。その背景には、知識不足ではなく“人間の反応のクセ”があります。その理解に役立つのが「パブロフの犬」という心理学の概念です。
■① パブロフの犬とは何か
パブロフの犬とは、ロシアの生理学者パブロフが行った実験に由来する概念です。本来は無関係だった刺激と反応が、繰り返し結びつくことで自動的な反応として定着する現象を指します。これは「条件反射」と呼ばれています。
■② 人は非常時ほど条件反射で動く
災害時は恐怖や緊張によって思考が狭まり、理性的な判断よりも、過去の経験や慣れた行動が優先されます。これは意志の弱さではなく、人間の脳の防衛反応です。
■③ 防災で起きやすい「誤った条件反射」
防災の現場では、次のような条件反射が見られます。
・警報が鳴っても「いつものこと」と感じて動かない
・揺れが収まるまで様子を見る癖が抜けない
・避難情報より日常行動を優先してしまう
これらはすべて、過去の経験が無意識に判断を支配している状態です。
■④ 訓練が逆効果になることもある理由
形式的な防災訓練を繰り返すと、「この程度なら大丈夫」という誤った安心感が条件反射として刷り込まれることがあります。その結果、本当の災害時に初動が遅れるケースも少なくありません。
■⑤ 防災訓練で本当に鍛えるべきもの
重要なのは「正しい行動」を覚えさせることではなく、「状況を見て考える回路」を作ることです。毎回少しずつ条件を変え、迷いながら判断する経験を積むことが、誤った条件反射を防ぎます。
■⑥ 被災地で見た“反射的行動”の怖さ
被災地派遣の経験では、「なぜ逃げなかったのか」と問うと、多くの人が「気づいたら動いていなかった」と答えます。これは恐怖によるフリーズと、過去の条件反射が重なった結果です。
■⑦ 防災士として感じた誤解されがちなポイント
多くの人は「知識があれば助かる」と考えがちですが、実際には知識よりも行動パターンの影響が大きい場面が多くあります。知っていても動けない、これが災害時の現実です。
■⑧ 条件反射を“防災側”に書き換える
防災では、条件反射そのものを否定するのではなく、活用する発想が重要です。揺れたら頭を守る、警報が鳴ったら一度立ち止まって確認するなど、望ましい行動を反射レベルまで落とし込むことが減災につながります。
■まとめ|防災は「考える前に動く仕組みづくり」
パブロフの犬の実験が示すのは、人は意識より先に反応してしまう存在だという事実です。
結論:
防災では「正しい知識」だけでなく、「正しい反射」を育てることが命を守ります。
防災士としての現場経験からも、行動を変えられた人ほど、非常時に迷わず動けていました。防災とは、頭で覚えるものではなく、体に染み込ませる備えでもあります。
■出典
・条件反射に関する生理学研究(I.パブロフ)

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