災害時の判断ミスは、知識不足だけが原因ではありません。
実は「お金の考え方」そのものが、避難や備えの判断を歪めてしまうことがあります。
その代表例が メンタルアカウンティング です。
防災の視点から、この心理の落とし穴を整理します。
■① メンタルアカウンティングとは何か
メンタルアカウンティングとは、人が無意識にお金を用途別に分けて考えてしまう心理傾向です。
例えば、
・生活費
・貯金
・娯楽費
・非常用のお金
といったように、実際は同じ「お金」であるにもかかわらず、別物として扱ってしまいます。
■② 防災で起きやすい典型的な例
災害対応の現場では、次のような判断が頻繁に見られます。
・「非常用のお金じゃないから使えない」
・「備蓄にお金を使うのはもったいない」
・「これは娯楽費だから防災には回せない」
結果として、
命や安全よりも“お金の区分”が優先される
という逆転現象が起きます。
■③ 避難が遅れる心理的メカニズム
メンタルアカウンティングは、避難判断にも影響します。
・ガソリン代がもったいない
・高速料金を使いたくない
・宿泊費を払いたくない
こうした思考が重なり、
「まだ大丈夫だろう」
という希望的観測を後押ししてしまいます。
被災地では、この判断遅れが命取りになる場面を何度も見てきました。
■④ 備蓄が進まない本当の理由
防災備蓄が進まない家庭の多くは、
「防災=特別支出」
という認識に縛られています。
しかし実際には、
・食料
・水
・日用品
はすべて「生活費の延長」です。
メンタルアカウンティングにより、
「防災費=ムダ」
と錯覚してしまうことが問題なのです。
■⑤ 災害時に強い人の共通点
災害時に冷静な人ほど、
・お金を区分しすぎない
・命を守る支出を最優先にする
・損得より安全を基準に判断する
という特徴があります。
これは金銭感覚が雑なのではなく、
判断基準が明確 なだけです。
■⑥ 防災視点での「お金の再定義」
防災では、お金を次のように捉えると判断が安定します。
・お金は目的ではなく手段
・使わずに失う命は取り戻せない
・安全確保は最優先の投資
この視点に切り替えることで、
迷いが減ります。
■⑦ 家庭でできる具体的な対策
家庭内で、次のような話し合いをしておくと効果的です。
・「命を守る支出は例外扱いしない」
・「非常時は家計区分を無効化する」
・「迷ったら安全側に倒す」
これは家族全員の共通ルールとして重要です。
■⑧ 防災は“心理対策”でもある
防災は、
・物理的備え
・情報の備え
だけでなく、
心理のクセへの備え
でもあります。
メンタルアカウンティングを自覚することは、
判断力を守る防災対策の一つです。
■まとめ|お金よりも先に守るもの
メンタルアカウンティングは、誰にでも起きる自然な心理です。
問題は、それに気づかず判断を委ねてしまうことです。
災害時は、
・家計簿より命
・節約より安全
・区分より判断
この優先順位を思い出してください。
■出典
・行動経済学におけるメンタルアカウンティング概念(Richard H. Thaler)

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