災害時、避難所で多くの人が直面する深刻な問題の一つが「トイレ」です。設備不足や不衛生といった物理的課題だけでなく、実は心理的な壁が避難者の健康を脅かしています。それが「恥ずかしさ」です。
■① 避難所トイレで起きている“見えない問題”
避難所では次のような行動が多く見られます。
・トイレを我慢する
・水分摂取を控える
・夜間の利用を避ける
これらはすべて、「恥ずかしい」「人目が気になる」「音や臭いが不安」といった心理的要因が引き金になっています。
■② 我慢が引き起こす健康リスク
トイレを我慢することは、単なる不快感で終わりません。
・脱水症状
・便秘
・尿路感染症
・エコノミークラス症候群
特に高齢者や女性、子どもにとっては、命に直結するリスクへ発展する可能性があります。
■③ 問題は設備だけでは解決しない
簡易トイレやマンホールトイレの整備は重要ですが、それだけでは不十分です。
・使い方が分からない
・周囲の視線が気になる
・「迷惑をかけたくない」という遠慮
こうした心理面への配慮が欠けると、トイレは「あるのに使われない」状況になります。
■④ 「恥ずかしくない」という共通認識づくり
防災の観点で重要なのは、
排泄は生理現象であり、恥ずかしいことではない
という認識を平時から社会全体で共有することです。
これは個人の意識改革ではなく、教育と周知による環境づくりが必要な分野です。
■⑤ 教育・周知でできる具体策
実際に有効とされる取り組みには次のようなものがあります。
・学校防災教育でのトイレ体験学習
・避難所運営マニュアルへの明記
・「我慢しないでいい」という掲示
・性別・年齢に配慮した説明
これにより、「使っていい」「使うべき」という行動の後押しが可能になります。
■⑥ 防災訓練に“トイレ”を組み込む意味
避難訓練では、どうしても避難行動や消火が中心になりがちです。
しかし、トイレの使い方・並び方・声かけを訓練に含めることで、実災害時の心理的ハードルは大きく下がります。
■⑦ 「恥」より「健康」を守る防災へ
防災は命を守る行動です。
排泄を我慢することは美徳でも配慮でもなく、リスク行動です。
「恥ずかしくない」「遠慮しなくていい」
この一言を、平時から社会に根付かせることが、防災力を底上げします。
■まとめ|トイレ教育も防災の一部
避難所トイレの問題は、設備×運営×心理の複合課題です。
教育と周知を通じて「使っていい空気」をつくることは、
被災後の健康被害を防ぐ“静かな防災”と言えるでしょう。
出典
内閣府 防災情報のページ「避難所におけるトイレ対策」

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