巨大地震に備えた地域防災のあり方が、いま大きく変わろうとしています。
これまでの「被害想定中心」から一歩進み、「実際に何人必要か」「救急車は何台足りないのか」「搬送に何分かかるのか」といった“数値化”へと進化しつつあります。
これは単なる制度改正ではありません。
災害対応を「計画書の中」から「現場で動ける体制」へ引き上げるための転換です。
■なぜ“数値化”が必要なのか
従来の地域防災計画では、
・死者数や負傷者数の想定
・建物倒壊数
といった被害規模の推計が中心でした。
しかし本当に重要なのは、その後です。
・救助要員は何人必要か
・救急車は何台足りないか
・道路寸断時の搬送時間は何分延びるのか
・医療スタッフや医薬品はどれだけ不足するか
これを具体的に数値で把握しなければ、「対応力」は見えません。
数値化とは、弱点の可視化です。
■交付金創設の背景
政府は、防災力強化を目的とした新たな交付金制度を創設する方針を示しました。
初年度は巨大地震の発生が懸念される地域を中心に支援する方向です。
南海トラフ地震
日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震
これらの想定地域において、
・救助体制の訓練強化
・救急搬送体制の見直し
・医療体制の補強
・ライフライン確保の強化
といった“実働力”を高める施策が後押しされます。
「計画のための計画」からの脱却です。
■現場を知る者として感じること
私は元消防職員として、被災地に派遣され、現地調整(LO)にも従事しました。
災害直後、現場でまず直面するのは「足りない」という現実です。
・人が足りない
・車両が足りない
・医療機関が逼迫する
・搬送ルートが確保できない
そして何より、「想定よりも動きが遅れる」という現実。
訓練では机上の計画通りに進みます。
しかし実災害では、道路は塞がれ、通信は不安定になり、医療は同時多発的に逼迫します。
だからこそ、「何人必要か」「何分かかるか」を事前に数値で詰める意味があります。
“なんとかなる”は、災害現場では通用しません。
■行政側が言いにくい現実
正直に言えば、すべての地域が同じ水準の防災力を持っているわけではありません。
自治体間で、
・救急体制
・医療拠点数
・訓練頻度
に差があるのは事実です。
数値化は、その差を明らかにします。
しかしそれは「批判」のためではなく、「改善」のためです。
弱点が分からなければ、強化はできません。
■防災庁設置の動き
防災対策の司令塔機能を強化する動きも進んでいます。
専門人材の増員や、自治体ごとの伴走支援体制が検討されています。
これは、事後対応中心から「事前防災」への転換を意味します。
防災は“起きてから”では遅い。
■今日できること
読者の皆さんに考えてほしいのは、地域の防災計画を「自分ごと」にすることです。
・あなたの地域の救急車は何台あるか
・災害拠点病院はどこか
・搬送に何分かかるか
・自治体の訓練は公開されているか
数字を見ると、現実が見えます。
そして行動が変わります。
■まとめ
防災×数値化とは、
「想定被害を語る防災」から
「対応力を測る防災」への進化です。
訓練回数、救急車台数、医療スタッフ数、搬送時間。
これらを具体化することが、命を守る第一歩になります。
被災地で私が痛感したのは、
“準備された地域ほど迷いが少ない”
という事実です。
数字は冷たいものではありません。
命を守るための、具体的な武器です。
出典:内閣府防災情報ポータル、読売新聞・産経新聞 2025-2026年報道

コメント