【防災士が解説】巨大地震×冬の避難|15年目の今こそ見直す「情報」と「低体温症」対策

東日本大震災から15年を迎える節目に、札幌・仙台をオンラインでつないだ防災シンポジウムが開かれました。焦点は「巨大地震への備え」と、見落とされがちな「冬の避難」の課題です。地震・津波の新しい情報発信制度を知り、真冬の避難で起きやすい低体温症を防ぐ――この2点は、命を守る行動に直結します。


■① 15年目の節目で改めて問われたこと

東日本大震災の経験は「備えの不足」を可視化しましたが、15年経つと危機感は薄れがちです。今回のシンポジウムが示したのは、巨大地震は“過去の出来事”ではなく“次に起きる現実”であり、特に冬の避難は被害を拡大させやすいという点です。


■② 新しく整備された「地震・津波の情報」を知らないリスク

東日本大震災の後、地震や津波に関する情報発信制度はアップデートされ続けています。たとえば「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のように、過去の経験を踏まえて“次のリスク”を早めに共有する仕組みがあります。情報を知らないままだと、判断が遅れ、避難のタイミングを逃します。


■③ 情報が出たときに迷う人が増える理由

現場で感じるのは、情報が増えるほど「どう動けばいいか」が曖昧になり、行動が止まる人が増えることです。避難は“正解探し”を始めた瞬間に遅れます。だからこそ、平時に「自分の地域で、どの情報が出たら、どこへ動くか」を決めておく必要があります。


■④ 冬の避難で増える「低体温症」という二次被害

真冬の地震・津波では、避難そのものが命取りになりえます。冷えは体力を奪い、判断力を落とし、持病の悪化や感染症リスクも高めます。低体温症は屋外だけでなく、体育館などの避難所でも起こります。「濡れ・風・冷え」を切る準備が、冬の避難の核心です。


■⑤ 被災地で見た「冬の避難」で起きやすい失敗

被災地派遣(LO)や避難所支援の現場で多かったのは、「寒さは我慢できる」という思い込みです。実際は、寒さが続くと睡眠が崩れ、食欲も落ち、体調が一気に悪化します。特に高齢者や子どもは、本人が訴えにくく、気づいた時には重い状態になっていることがあります。


■⑥ 今日からできる冬の避難対策

まずは“お金をかけずに効く順”で整えます。
・避難先までの移動で濡れないルートを確認する(雨雪・冠水・凍結を想定)
・防寒の基本は「首・手首・足首」を守る(体感が変わる)
・濡れ対策としてビニール袋と替え靴下を入れる(小さく効く)
・簡易カイロは「貼る場所」を決めておく(背中・腰・お腹など)
これだけでも、冬の避難の失速を防げます。


■⑦ 地震情報を「行動」に変えるシンプルなルール

情報は“見た瞬間”に動ける形にして初めて役に立ちます。
・津波:迷ったら高い所へ(海や川から離れる)
・揺れ:まず身の安全、次に火元、最後に出口確保
・注意情報:家族の集合ルールと連絡手段を確認し、避難の準備を前倒し
スマホで情報を追うより、先に「動ける状態」にしておくことが重要です。


■⑧ やらなくていいこと

・情報を全部理解してから動こうとする
・冬の避難を“装備勝負”にして高額な道具を揃えすぎる
・避難所に行けば何とかなる前提で、自宅の耐震や家具固定を後回しにする
冬は特に「迷いが命取り」になりやすいので、最小限の準備で行動を軽くする方が効果的です。


■まとめ|冬の避難は「情報」と「冷え対策」で決まる

巨大地震への備えは、特別なことではなく「いつもの生活の延長線」で整えられます。新しい情報発信制度を知り、冬の避難で低体温症を起こさない準備をする。この2つをセットで持つだけで、助かる確率は上がります。

結論:
冬の巨大地震に強い人は、情報を“行動ルール”に変え、冷えを“事故”として扱っている。

防災士として現場を見てきた立場から言うと、冬の避難は気合では乗り切れません。冷えは静かに人を弱らせます。だからこそ、平時に「自分が迷わない形」まで落とし込むことが、命を守る備えになります。

出典:北海道放送「【東日本大震災から15年】札幌・仙台で防災シンポジウム 巨大地震への備えと『冬の避難』の課題」(2026年2月10日配信)

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