「太陽フレアで通信が途絶する」と聞くと、どこか遠い話に感じるかもしれません。
ですが災害時ほど、通信は“命をつなぐインフラ”になります。
短波通信(HF)は、航空無線や防災無線など、広域での連絡を支える重要な手段です。
その短波が、太陽フレアによって一時的に使えなくなる現象が「デリンジャー現象(SWF)」、最悪レベルが「ブラックアウト」です。
今回、防衛大学校・NICT・名古屋大学の研究グループが、ブラックアウトの起きやすさを“事前に測る”新指標「fB」を定義し、予測精度が大きく上がる可能性が示されました。
防災の現場視点で、意味するところを整理します。
■① 通信ブラックアウトとは何か?
ブラックアウトは、太陽フレアからのX線・極端紫外線の影響で、電離圏の状態が急変し、短波通信が吸収されて届かなくなる現象です。
短波は「電離圏の反射」を利用するため、電離圏が乱れると一気に不安定になります。
つまり、アンテナや機器が壊れていなくても、空が原因で“つながらない”が起きます。
■② 何が困る?災害時の短波の役割
短波通信は、災害時の長距離通信や、広域連携のバックアップで活躍します。
平時は目立ちませんが、いざという時に生きる「最後の連絡手段」の一つです。
被災地では、情報が入らないだけで判断が止まり、動けなくなる人が増えます。
「安全確認」「搬送」「物資」「避難」…全部が情報で回っているからです。
■③ なぜ予測が難しかったのか?
従来は「太陽フレアの規模(フレアクラス)」が主な予測材料でした。
しかし同規模のフレアでも、ブラックアウトの有無や継続時間に差が出る。
つまり、フレアの強さだけでは決まらない。
“受け側(電離圏)の状態”が重要だった、というのが今回の核心です。
■④ 新指標「fB」が意味すること
研究グループは、フレア発生直前のイオノゾンデ観測(f0F2・fmin)から、ブラックアウトになりやすい電離圏の状態を示す新指標「fB」を定義しました。
これにより、
・ブラックアウトが起きるか
・どれくらい続くか
の予測精度が大きく向上する可能性が示されました。
防災の言葉で言い換えるなら、
「同じ規模の揺れでも被害が違う」みたいなものです。
“地盤(=電離圏の状態)”を見ないと、本当のリスクは読めない。
■⑤ 実例:2024年5月のブラックアウトが示す現実
2024年5月の事例では、沖縄で35分、稚内で約105分のブラックアウトが報告されています。
同じ現象でも地域差が大きい。
被災地派遣でも痛感しましたが、広域災害は「地域差」で計画が崩れます。
連絡が取れる地域と取れない地域が混ざると、支援の優先順位が混乱しやすい。
だからこそ、“どこで起きやすいか”を事前に読める価値は大きいです。
■⑥ 私たち(個人・地域)が受ける影響は?
個人が短波を使う機会は少ないですが、影響は間接的に届きます。
・航空便の運航やルート変更
・防災無線や一部の連絡系統のバックアップ低下
・広域連携(応援部隊・物資調整)の遅れ
・情報発信の集中による混雑(SNS・電話)との同時発生
「通信が全部止まる」は起きにくくても、
“頼れる系統が一つ減る”だけで、復旧は遅くなりやすい。
■⑦ いざという時の判断基準
通信が不安定な時ほど、判断を単純化します。
・家族の集合ルール(場所・時間・優先順位)を決めておく
・連絡が取れない前提で、紙に残す(メモ・地図)
・情報は「公式発表」>「拡散情報」の順に扱う
・通信が戻ったら、SNSより先に自治体・気象・防災機関の一次情報を見る
災害時に強い人は、通信がある前提で動いていません。
通信が途絶しても動ける設計がある人です。
■⑧ 今日できる最小の備え
迷ったら、これだけで十分です。
・家族の集合場所を1つ決める(第二候補も)
・紙の連絡先リストを作る(スマホが死ぬ前提)
・FMラジオ(スマホでなく専用機)を用意する
・「連絡が取れない時は〇時間後に〇〇」ルールを決める
防災は、道具よりも“運用”が命を守ります。
■まとめ|(まとめタイトル)
結論:
通信ブラックアウトは「遠い宇宙の話」ではなく、災害対応の遅れを生む“現実のリスク”です。
防災士として被災地を見てきた立場から言うと、
困るのは「情報がないこと」そのものより、情報がなくて“判断が止まること”です。
通信がある時しか動けない設計は、災害に弱い。
連絡が取れなくても、やることが決まっている状態が強い。
出典:電波タイムズ「『ブラックアウト』の発生しやすさを表す新指標 防衛大やNICT等研究グループが定義」(2026年2月10日配信)

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