災害時に命を守るのは、体力よりも「判断力」です。ただし、ここで言う判断力とは、独自理論ではなく、内閣府や気象庁が示している避難情報の考え方を正しく理解し、“迷わず動ける状態”にしておく力のことです。
本記事では、公的情報の方向性に沿いながら、防災士の視点で「判断を軽くする具体策」を整理します。
■①防災判断力とは「公的基準に沿って動ける力」
防災判断力は、独自の正解を探す力ではありません。
内閣府や気象庁が示す警戒レベルなどの基準に沿い、迷わず行動に移せる力です。
・警戒レベル3:高齢者等は避難
・警戒レベル4:危険な場所から全員避難
・警戒レベル5:命の危険が迫る状況
判断を軽くする第一歩は、「公的基準を自分の家庭の行動に落とすこと」です。
※警戒レベルの詳細は、必ず内閣府・気象庁の公式ページで確認してください。
■②判断を壊すのは「情報過多」と「疲労」
災害時は情報が一気に増えます。
テレビ、SNS、防災アプリ、近隣の声。
情報が増えるほど判断は重くなります。
さらに、睡眠不足や精神的疲労が重なると、危険を過小評価しやすくなります。
厚生労働省の国民健康・栄養調査では、睡眠6時間未満の人が4割前後に上ると報告されています。慢性的な睡眠不足は、注意力や判断力の低下につながることが知られています。
災害時に「決められない」は、性格ではなくコンディションの問題でもあります。
■③判断力を育てる鍵は「当日に考えない設計」
災害時に強い家庭は、当日に議論しません。
・警戒レベル4が出たら避難
・夜間豪雨なら暗くなる前に移動
・家族の役割を固定
事前設計があると、当日は確認するだけになります。
判断力は鍛えるより、「軽くする設計」で育ちます。
■④避難基準は“二択”に落とす
判断を複雑にしないために、基準は二択にします。
例:
・レベル4 → 行く
・川の水位が〇〇超 → 行く
ポイントは、家族全員が同じ解釈をできる基準にすることです。
公式情報を基準にすることで、感情や空気に左右されにくくなります。
■⑤避難は「分散」という考え方もある
内閣府は、避難所だけでなく、安全が確保できる親戚宅や知人宅への「分散避難」も選択肢として示しています。
避難先を3層に整理すると判断が軽くなります。
・第1避難:指定避難所
・第2避難:親戚・知人宅(安全確認が前提)
・第3避難:自宅の上階など(ハザードに応じて)
※自宅が安全な区域であることが前提です。
■⑥車中避難は「原則」ではない
徒歩での早期避難が原則です。
車中避難は、
・道路が確保されている
・浸水・土砂災害の危険がない
・一時的な避難として使用する
といった条件付きの例外的選択です。
車での移動は渋滞や立ち往生のリスクもあるため、原則は徒歩避難であることを必ず押さえてください。
■⑦現場で感じた“決めやすい人”の特徴
被災地派遣やLOとして現場に入った際、強く感じたのは「知識量」より「決めやすさ」の差でした。
・基準が明確
・役割分担が固定
・持ち物が最小限
・完璧を求めない
逆に、情報を集め続けて決めきれない家庭ほど、避難が遅れる傾向がありました。
判断を軽くする設計は、本当に差を生みます。
■⑧今日できる“判断力トレーニング”
防災判断力は、特別な訓練ではなく日常で育てられます。
・避難の二択ルールを1つ決める
・警戒レベルと行動を紐づける
・家族の役割を3つだけ決める
・情報を見る時間を決める
・睡眠を削らない
全部やる必要はありません。
1つ決めるだけで、判断は軽くなります。
■まとめ|公的基準を「自分ごと」に落とす
防災判断力は、独自理論ではなく、公的基準を自分の家庭に落とし込む力です。
結論:
判断を守る最短ルートは「公式情報に沿った家庭内ルールを平時に決めておくこと」です。
防災士として現場を見てきた実感として、助かった人は“勇敢だった”というより、“迷わない設計をしていた”人でした。今日、家族で警戒レベルと行動を1つだけ紐づけてみてください。それだけで、次の災害での判断は確実に軽くなります。
出典:内閣府「避難情報に関するガイドライン」、気象庁「防災情報の解説」

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