少雨と乾燥、そして風。条件がそろうと、林野火災は一気に広がります。しかも原因の多くは「人の火」。だからこそ、たき火や火入れは“やり方”より先に「やっていい状態か」「届出や許可が必要か」「中止判断はどこか」を決めておくのが、防災として最重要です。
元消防職員として現場に関わってきた体感でも、延焼を止められない火災の入口は、だいたい「いつもの感覚」で火を扱ったところから始まります。この記事では、林野火災警報・注意報が出ていない日も含めて、事故を起こさないための判断基準を整理します。
■①なぜ少雨の年は林野火災が“急に大きくなる”のか
林野火災が怖いのは、火そのものより「燃え広がる条件」がそろいやすい点です。
・落ち葉や枯れ草が乾いて“導火線”になる
・風で火の粉が飛び、離れた場所に次々着火する
・一度斜面に乗ると、上へ上へと伸びやすい
少雨が続く時期は、地面も植物も乾き、表面の小さな火が「面」で走ります。火が小さく見えるうちに止めるのが原則で、止められない可能性が少しでもあるなら“やらない”が正解です。
■②林野火災の原因は「人の火」が多い|だから“やらない判断”が最強
林野火災は自然発火よりも、人の手による出火が多いと言われます。よくある入口はこれです。
・たき火の火の粉が枯れ草へ
・草焼き・火入れが風で制御不能に
・火消しが不十分で再燃(翌日出火もある)
現場で多い誤解は「火が小さいから大丈夫」。乾燥と風があると、小さい火ほど“飛ぶ”ので危険です。火のサイズで判断せず、条件で判断します。
■③警報・注意報が出ていなくても「届出」「許可」が必要なケースがある
ここが盲点です。林野火災警報・注意報が出ていない日でも、行為の内容と場所によっては手続きが必要になります。
・火災と紛らわしい煙や炎が出る行為:地域の火災予防条例等で届出が求められる場合あり
・「火入れ」:森林やその周囲で面的に焼却する行為は、市町村長の許可が必要な場合あり(地域の運用に従う)
重要なのは「全国一律ではない」こと。必ず、市町村・消防本部の案内(条例・要領)を確認し、必要なら事前に相談してください。迷ったら“やらない or 相談する”で事故率は一気に下がります。
■④中止の判断基準を先に決める|当日に迷うと事故が起きる
火の扱いは、「始める判断」より「やめる判断」が難しいです。だから、開始前に中止条件を固定します。
おすすめの中止基準(例)
・風が強い/風向が不安定
・周囲に枯れ草・落ち葉が多い
・水が十分に確保できない
・人手が足りない(監視・消火・連絡が回らない)
・周辺で乾燥注意が続いている/行政の注意喚起が出ている
行政側が言いにくい本音としては、「あなたの“慣れ”は評価できない」です。現場は結果でしか守れません。だから基準はシンプルに「条件が悪いなら中止」でいい。
■⑤安全に行うなら「準備8割」|消火は“道具”より“配置”
どうしても実施するなら、準備を“やり過ぎる”くらいがちょうどいいです。
・水(バケツ・タンク・ホース等)を複数用意し、手の届く位置に配置
・火を囲う(風で崩れない簡易の防火帯/周囲の可燃物除去)
・監視役を固定(スマホ・作業の兼任は禁止)
・終了後の「再確認」を予定に入れる(完全鎮火→時間を置いて再点検)
元消防職員としての感覚では、再燃は「帰り支度の雑さ」から起きます。最後の5分を削らないのが、いちばん効きます。
■⑥“判断力低下”が火の事故を呼ぶ|睡眠不足と情報過多は危険
防災は道具より判断です。睡眠不足や疲労があると、判断は確実に鈍ります。
・風の変化に気づくのが遅れる
・「大丈夫だろう」が増える
・消火確認が雑になる
・連絡・退避の判断が遅れる
災害対応や現場でも、疲れているときほど「基本動作」が抜けます。火を扱う日は、前日は寝る。これは根性論ではなく事故防止の技術です。
■⑦地域でやるなら「役割分担」と「通報ライン」を先に決める
複数人で行うなら、チーム防災の基本は“会話の設計”です。
最低限決めること
・指揮役(中止判断を出す人)
・消火担当(道具・水・配置)
・監視担当(風・火の粉・周囲)
・連絡担当(近隣への声かけ、異常時の通報)
さらに、「異常を感じたら誰が、どこに連絡するか」を固定します。火が大きくなったら119番。早いほど被害は小さくなります。
■⑧今日できる“判断を軽くする”防災行動|火を使う前のチェックリスト化
最後は仕組み化です。迷いを減らすと事故も減ります。
今日やること(1つでOK)
・スマホのメモに「火を使う前チェック」を作る
例:火を使う前チェック(コピペ用)
・今日、乾燥・強風じゃない?
・注意喚起・警報・注意報は出てない?(市町村/消防本部)
・届出や許可は必要?(迷ったら確認)
・水は十分?配置はOK?
・監視役は固定できる?
・中止基準は決めた?(風が出たら即中止)
これだけで、当日の判断が軽くなります。
■まとめ|林野火災を防ぐ最短ルートは「やらない判断」と「迷わない仕組み」
林野火災の予防は、特別な装備ではなく、火を扱う前の判断で決まります。警報・注意報が出ていない日でも、届出や許可が必要なケースがあり、条件が悪い日は“やらない”が最強の防災です。
結論:
火を扱う日は「中止基準を先に決める」「届出・許可を確認する」「準備と監視を仕組みにする」で、事故の芽はほとんど摘めます。
防災士として、そして元消防職員として感じるのは、守れた現場は“勇気”より“仕組み”が先にあったということです。今日のうちに、家族や仲間と「火を使う前チェック」を共有しておきましょう。それだけで、次の判断が軽くなります。
出典:政府広報オンライン「山火事を防ぐためにできること。乾燥・強風の季節は特に注意!」(火入れの許可等の説明)
https://www.gov-online.go.jp/article/202601/entry-10685.html

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