【元消防職員が解説】山焼き事故から考える「野焼き・火入れ作業」の命を守る基本原則

山口県美祢市の秋吉台で行われた恒例の山焼きで、作業員の衣服に火が燃え移り、死亡する事故が報じられました。山焼きは地域の自然維持や景観保全のために続けられてきた行事ですが、一歩間違えば命を奪う危険性をはらんでいます。
今回はこの事故をきっかけに、「火を扱う作業」の基本と、防災の視点から見た安全原則を整理します。


■① 何が起きたのか(事実の整理)

報道によると、秋吉台の山焼き開始直後、作業中の1人の衣服に火が燃え移り、搬送後に死亡が確認されました。現場は龍護峰付近とされています。秋吉台では過去にも山焼き中の死亡事故が発生しており、自然を守る行事であっても重大事故が起こり得ることが示されています。


■② 山焼き・野焼きが持つ本当の危険性

山焼きは乾燥した枯れ草を一斉に燃やします。
危険要因は主に次の4つです。

・突風による炎の方向変化
・可燃性の衣類
・地形による火勢の急変
・煙による視界不良

火は「予測通りに動かない」ことが最大のリスクです。


■③ よくある誤解|経験があれば大丈夫?

毎年の恒例行事だから安全、経験者がいるから大丈夫——これは現場でよくある誤解です。
火災は「慣れ」によって事故が起きやすくなります。元消防職員として現場に立ってきた経験上、事故の多くは“想定内”の作業中に発生します。油断ではなく、慣れが判断を鈍らせます。


■④ 火が衣服に燃え移るメカニズム

乾燥した草地では炎の温度が非常に高くなります。
・ポリエステルなどの化学繊維は溶けて皮膚に貼り付く
・袖口や裾から炎が入り込む
・風向きの急変で一瞬で包まれる

一度燃え移ると数秒で全身に拡大する可能性があります。


■⑤ やらなくていい行動

・普段着のまま火入れ作業を行う
・風向きを軽視する
・単独で可燃エリアに入る
・「少しくらいなら」と防護を省略する

火を扱う場面では、過信が最も危険です。


■⑥ 命を守る基本装備

火入れ作業では、
・難燃性の衣服
・露出を避ける長袖・長ズボン
・手袋・ゴーグル
・消火器具の即応配置

「消せる準備」をしてから火をつける。これが原則です。


■⑦ 現場で見た“火の怖さ”

私は被災地派遣や林野火災対応に関わった経験がありますが、火は一瞬で状況を変えます。延焼現場では、想定していた風向きが変わっただけで退路が塞がれることがあります。LO(連絡調整)として現場に入った際も、最優先は“退路確保”でした。火に囲まれたら逃げ場はありません。自律型避難の原則は、火の現場でも同じです——「最悪を想定して動線を確保する」こと。


■⑧ 恒例行事でもリスク評価は毎回ゼロから

山焼きは自然保全のために必要な活動ですが、安全は“前年と同じ”では守れません。気象条件、乾燥度、参加者の装備状況——毎回リスクは変わります。行政や主催者の安全管理体制だけでなく、参加者一人ひとりの危険認識が命を守ります。


■まとめ|火を扱う行為は常に命と隣り合わせ

山焼き事故は特別な出来事ではありません。火を扱う行為は、日常の延長にある危険です。慣れを排し、装備を整え、退路を確保する。これが命を守る基本原則です。

結論:
火は制御できると思った瞬間に、最も危険になる。

元消防職員として強く伝えたいのは、「慣れ」が最大の敵だということ。火を扱うときは、毎回ゼロから危険を見直す。その姿勢が命を守ります。

出典:テレビ山口「秋吉台・山焼きで作業員死亡」(2026年2月14日)

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