【防災士が解説】150兆円GX投資は私たちの生活と防災をどう変えるのか

経済産業省が示した「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」を活用した150兆円規模の投資。その“使い道”が公表されました。電動車の充電設備、次世代太陽電池、洋上風力、住宅の断熱改修などが柱です。一見すると環境政策の話ですが、防災の視点から見ると「停電に強い社会」「災害後の回復力」に直結するテーマでもあります。防災士として、その意味を整理します。


■① GX投資とは何か

GXとは、脱炭素型の産業構造へ転換する取り組みです。政府は今後10年で官民合わせて150兆円規模の投資を目指しています。

GX経済移行債を呼び水に、民間投資を促し、低炭素エネルギーや革新的技術へ資金を振り向ける構想です。単なる補助金ではなく、産業構造そのものを変えることが狙いです。


■② 注力分野はどこか

主な投資促進策は次の通りです。

・電動車の充電設備などに34兆円以上
・ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力などに31兆円以上
・住宅の断熱改修や省エネ住宅支援に14兆円以上

エネルギーの作り方・使い方・ため方を変える分野に重点が置かれています。


■③ 防災との接点①「電源の分散化」

災害時に最初に困るのは停電です。電動車(EV)は単なる移動手段ではなく、非常用電源として活用できる可能性があります。

被災地派遣でLOとして活動した際、発電機や電源車の到着までの“空白時間”がいかに厳しいかを実感しました。電源が分散している社会は、災害に強い社会でもあります。


■④ 防災との接点②「住宅の断熱化」

断熱性能の向上は、平時は省エネ効果ですが、災害時には室温維持に役立ちます。

冬の避難所や停電下の住宅で、寒さや暑さが健康を脅かす場面を何度も見てきました。断熱改修は「エネルギー対策」であると同時に「命を守る改修」でもあります。


■⑤ 革新的技術への投資が意味するもの

GX投資は「民間だけでは投資判断が困難な技術」を優先するとされています。これは将来リスクを減らすための先行投資です。

防災士として感じるのは、リスクは“見えてから”では遅いということです。先回りの投資は、長期的な耐災害力を高めます。


■⑥ 経済成長と排出削減の両立

GXの原則には「産業競争力強化と排出削減の両立」が掲げられています。

災害復旧でも同じですが、単に元に戻すだけではなく、より強い構造へと再構築することが重要です。これを「ビルドバックベター」と呼びます。GXは産業版のビルドバックベターとも言えます。


■⑦ 国内供給力の強化は防災力でもある

国内でエネルギーや資源を循環させる体制は、災害時や国際情勢不安定時の安定供給につながります。

被災地では、物資や燃料の調達が滞ると支援活動も止まります。サプライチェーンの強靭化は、見えにくい防災投資です。


■⑧ 今日、私たちが考えるべきこと

GXは国家規模の政策ですが、個人の行動も連動します。

・断熱改修を検討する
・再生可能エネルギーや省エネ製品に関心を持つ
・電源確保の多重化を考える

“脱炭素”という言葉の裏側には、“災害に強い社会づくり”という意味も含まれています。


■まとめ|GX投資は「環境政策」であり「防災投資」でもある

150兆円規模のGX投資は、エネルギー転換と産業構造改革を目指す政策です。しかし防災の視点から見ると、電源分散化、断熱強化、国内供給体制の強化など、耐災害力を底上げする要素が多く含まれています。

結論:
GX投資は、未来の環境を守るだけでなく、災害に強い社会をつくる投資でもある。

被災地で感じたのは、「備えが社会構造に組み込まれているかどうか」で回復の速さが変わるという現実です。GXは経済政策ですが、長期的には私たちの暮らしの安全度を左右する取り組みでもあります。

【出典】経済産業省「GX実現に向けた基本方針」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/gx/

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