【防災士が解説】ワンヘルスで考えるペットの防災|中野区役所セミナーに学ぶ“家族まるごと”備え

災害時、「人が助かる」だけでは足りません。
ペットも同じ家族であり、守れなければ避難そのものが遅れます。

中野区役所では2月28日、「防災士と考えるペットの防災」セミナーが開催され、講義に加えて“我が家の防災マニュアル作り”まで行う参加型の内容です。
こうした取り組みは、ワンヘルス(人・動物・環境を一体として守る考え方)にも直結します。


■① ワンヘルスとは「人とペットを同時に守る」発想

ワンヘルスは、命を分けて考えない視点です。
災害時は特に、飼い主が無事でもペットが取り残されると、救助・避難・生活が崩れます。

「ペットがいるから避難しない」
この選択が命取りになるケースを、現場では何度も見てきました。

だからこそ、ペット防災は“趣味”ではなく、家族の危機管理そのものです。


■② セミナーのポイントは「講義+マニュアル作り」

今回のセミナーは、ペット防災の講義だけで終わりません。
参加者それぞれの目線で課題を整理し、自助につながる防災マニュアルを作る構成です。

知識を聞いて終わるより、
「自分の家の課題」を言語化した方が行動につながります。

この“自分ごと化”こそ、実務的に最強の防災です。


■③ ペット防災で誤解されがちなポイント

ペット防災で多い誤解は2つです。

・避難所に行けば何とかなる
・ペットは慣れているから大丈夫

実際は、同行避難はできても同室同伴が保証されるとは限りません。
環境変化で食べない、吠える、下痢をする、パニックになることもあります。

「人の備え」と「ペットの備え」は別物。
同時に設計する必要があります。


■④ “家の中の避難”を成立させる備え

在宅避難になった場合、ペットは人以上に環境変化に弱いです。

・停電で室温管理ができない
・断水で飲み水が足りない
・散歩コースが危険になる
・トイレ環境が崩れる

防災士として伝えたいのは、
「水」と「温度」と「排泄」を優先して整えることです。

人の備蓄だけで満足せず、ペット分も同じ基準で確保しておくことが大切です。


■⑤ 被災地派遣で見た“ペットが避難を止める瞬間”

被災地派遣(LO)で調整に入った際、避難が遅れた理由が「ペットを連れて行けないから」という家庭に何度も出会いました。

準備がないと、避難所の情報があっても動けません。
キャリーがない、リードがない、フードがない。
この小さな欠落が、避難の意思決定を止めます。

結局、最後に人を守るのは「判断力」ですが、
その判断力を支えるのは“準備の厚み”です。


■⑥ 今日から作れる「ペット防災マニュアル」最小構成

マニュアルは立派である必要はありません。最小で動ける形が正解です。

・避難先(第一・第二候補)
・同行避難のルール確認(自治体・施設)
・持ち出し品(フード・水・薬・トイレ・タオル)
・身元確認(迷子札・写真・情報メモ)
・輸送手段(キャリー・カート・車)
・預け先(親族・友人・ペットホテル)
・連絡網(家族・近所・かかりつけ)

一枚に収めて、冷蔵庫や玄関に貼れる形が最も機能します。


■⑦ 自律型避難は「ペットがいる家庭」ほど重要

災害時、正解は一つではありません。
避難所が開かないこともある。道路が切れることもある。同行避難の条件が変わることもある。

だからこそ、自律型避難が必要です。

・自分で地域のルールを確認する
・自分で連れて行く手段を持つ
・自分で最小の行動計画を作る

セミナーのように、参加者が自分の言葉でマニュアル化する取り組みは、自律型避難の訓練そのものです。


■⑧ 参加できなくても“同じ効果”を自宅で再現できる

参加できない人でも、同じ効果は再現できます。

・家から避難先まで実際に歩く(ペット同伴の想定)
・夜間・雨天・暑寒の条件も考える
・キャリーに入れる練習をする
・玄関に「持ち出しセット」を固定する

防災は気合いではなく、段取りです。
段取りがある家庭ほど、災害時に落ち着いて動けます。


■まとめ|ワンヘルスの備えは「家族全員が動ける設計」

ペット防災は、ペットのためだけではありません。
人の避難判断を止めないための、家族の危機管理です。

講義で理解し、ワークで自分の家に落とし込む。
この形は、実務的に最も強い防災教育です。

結論:
ペット防災は“人の避難”を成立させる備え。ワンヘルスの視点で、家族まるごと動ける設計にすることが命を守ります。

被災地で感じたのは、準備がある家庭ほど迷わないという現実です。
ペットがいるなら、なおさら「迷わない仕組み」を先に作っておくことが最善です。

【出典】
中野区公式サイト「1階シェアノマ 公募ワークショップスケジュール」

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