抗がん剤治療(化学療法)中は、体力や免疫が落ちやすく、体調が日ごとに変わります。
平時でも大変なのに、災害で水・電気・交通・医療が止まると、リスクは一気に跳ね上がります。
防災は「特別な人の話」ではありません。
治療中の方こそ、命を守るために“段取り”が必要です。
■① 抗がん剤治療中に災害が怖い理由
抗がん剤治療中に起きやすい問題は、災害時に増幅します。
・発熱や感染症リスクが上がる
・脱水や下痢で急変しやすい
・食事や睡眠の乱れで体力が落ちやすい
・薬の中断や遅れが不安につながる
災害は「病気の人に容赦しない」。
これは現場で何度も見てきた現実です。
■② まず結論|優先順位は「連絡・薬・受診基準」
治療中の防災で最優先は、この3つです。
・主治医/病院の連絡手段を確保する
・薬と情報(お薬手帳など)を守る
・「この症状なら受診(連絡)」の基準を決めておく
被災地派遣(LO)で感じたのは、
迷いが多い人ほど動けず、体調を崩しやすいということです。
判断を軽くする準備が、命を守ります。
■③ いちばん大事な持ち出しは「薬」と「情報」
治療中の非常持ち出しは、一般家庭の防災袋と中身が違います。
最低限、次をセットにして一か所にまとめます。
・お薬手帳(または薬の写真・薬袋)
・病名、治療内容、アレルギー、緊急連絡先メモ
・内服薬(可能なら数日分)
・保険証(または資格確認に必要な情報)
・主治医や病院の電話番号(紙に書いたもの)
薬が「ある」だけでは足りません。
何を、どう飲むかを説明できる情報がセットで必要です。
■④ 発熱は要注意|“受診の目安”を先に決める
抗がん剤治療中は、感染が重症化しやすいことがあります。
だからこそ、災害時ほど「受診・連絡の基準」を明確にしておきます。
例として、次のようなサインは見逃さない。
・発熱が続く
・悪寒、強いだるさ
・咳やのどの痛みが強い
・下痢や嘔吐で水分がとれない
・息苦しさ、意識がぼんやりする
迷ったら自己判断で耐えず、連絡する。
この一手が遅れると、取り返しがつかないことがあります。
■⑤ 避難所で困りやすいのは「感染」と「体温管理」
避難所は人が密になりやすく、感染症が広がりやすい環境です。
治療中の方は、次を前提に備えます。
・手指消毒、マスク、ウェットティッシュ
・体温計
・水分(少量でも飲めるもの)
・毛布や上着などの防寒
ここで役立つのが「避難服」です。
防災専用品を買わなくても、普段着のスウェットや部屋着をローリングストックとして用意しておくと、体温調整がしやすく、着替えも楽になります。
治療中は体温が落ちるだけで体力が削られるため、衣類は“医療の一部”として考えると安心です。
■⑥ 「治療は絶対止めるな」ではない
災害時は病院に行けない、薬が手に入らないことがあります。
このとき大事なのは、焦って自己流で変えないことです。
・中断や延期が許容される治療もある
・逆に、急ぐべき症状もある
元消防職員として言えるのは、
災害時に危険なのは“独断”です。
「今の状態」「薬」「症状」を整理して伝えられるだけで、支援の質が変わります。
■⑦ 家族の役割分担で「判断」を守る
治療中は、本人が全部を背負うと疲れます。
家族で役割を決めます。
・連絡担当(病院・家族)
・持ち出し担当(薬・書類)
・移動担当(車、避難先の確認)
・体調担当(体温、水分、症状メモ)
被災地では「誰が何をするか」が決まっている家庭ほど、落ち着いていました。
これは精神論ではなく、段取りの差です。
■⑧ 今日できる最小行動
大きな準備を一気にやる必要はありません。
まずはこの3つだけで十分前進です。
・薬と薬情報をひとまとめにする
・主治医/病院の連絡先を紙に書いて財布に入れる
・「この症状なら連絡」の基準を家族と共有する
自律型避難とは、治療中であっても「自分に合う判断」を持つことです。
その判断を守るのが備えです。
■まとめ|治療中の防災は「命を守る段取り」
抗がん剤治療中の災害対策は、特別なことではありません。
・薬と情報を守る
・受診基準を決める
・感染と体温管理を優先する
・家族で役割を分ける
結論:
治療中の防災は「不安を減らす仕組みづくり」。判断を軽くする段取りが命を守ります。
被災地派遣(LO)で何度も見たのは、
準備がある人ほど落ち着いて、体調の悪化を防げたという現実です。
今日の一つの行動が、未来の安心につながります。
【出典】
国立がん研究センター がん情報サービス「大規模災害に対する備え」

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